外観
澄んだ輝きの、やや濃い目のルビー色。
エッジの紫は完全にとれ、相応の経年が見て取れる。
粘性は弱め。傾けると滲んだアーチが見られる。
ピノノワールを思わせる、比較的ライト寄りの印象を持つ外観。
香り
香りはしっかりと感じられる。
ブルーベリーやカシス、ブラックベリーといった果実、スミレといった赤い花。
クローブや胡椒のようなスパイシーなニュアンス。
第一アロマが主体と思われる、華やかで陽性の香り。
味わい
アタックは比較的穏やか。
はっきりとした酸、自然な果実の甘みと、厚いアルコールの存在感が入り混じる。
タンニンは緻密で飲みやすいが、しっかりとしたヴェジタルな下地が出来ている。
それら全てが明確に感じられながらも全体としては調和しており、非常にエレガント。
余韻は長め。舌の奥に重いヴェジタルさと、熱を長く感じる。
総評
スマートでいながら熟成感・重厚感のあるフルボディ。
供出温度は18度前後、グラスは大ぶりのものがよいだろう。
デキャンタージュは不要。抜栓してすぐに楽しむ事ができる。
スペインと言えば重厚感のあるテンプラニーリョを想像する方が多いのではないかと思う。すると、ピノノーワルを始めとする華やか系が好きな方はともすれば疎遠になりやすい国とも言えるのではないかと思うが、本作はそんな固定観念に一石を投じるワインだと言よう。
マヨルカ島はスペイン東部に浮かぶ、バレアレス諸島最大の島だ。緯度としてはイタリアのサルディーニャ島と同じくらいなので、ワイン産地としてはかなり南の方に位置する土地だと言える。
カイエットという品種は、そのマヨルカ島でそのほとんどが栽培されており、原産地と言われるイタリア・南フランスでは現在栽培されていないという。
そんなどっぷりスペイン産の葡萄であるが、とても面白い味わいである。
まず外観やファーストアタックはピノノワールを思わせる華やかさが前面に感じられる。しかし一方で、香りや余韻においては、一般的なスペインワインの印象を裏切らない、厚いアルコールや力強いタンニンの印象が強い。
そしてそれらは二極化しているわけではなく、シームレスに繋がっている。別の言い方をすれば、違和感なく調和している。
今回は6年物をいただいたが、丁度良いくらいだったのではないだろうか。もう数年すれば更に深みを増しそうではあるが、早すぎたという感覚はあまりない。
品質、完成度、そのいずれにおいても非常にハイレベルに達成された一本である。ブルゴーニュで同じくらいの満足感のものを思うと、8000円クラスは下らないだろう。
万人に愛される華やかさを持ち、マヨルカ島産という希少性・話題性にも事欠かない。今年のＷ杯に合わせてワイン持ち込み観戦を予定されている方は、これをセレクトすることで、話題の中心になれるかもしれない。
満足度 ： ★★★★☆
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