書評:堀江 貴文「東京改造計画」

書評
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こちらの書籍の書評になります。

堀江 貴文「東京改造計画」

現代政治へのアジテーション

この本では、東京の(或いは日本の)政治の在り方について、
大々的に駄目出しするところから始まります。

・小池都知事の公約の達成率は「ゼロ」である
・経営者だったら即刻クビだ
・豊洲移転問題を引っかき回し、大量の税金を無駄にした
・2020年のコロナ対応でも、データを重視せず、己の保身のために不当な自粛を強要した
→「これじゃダメでしょ!」

つまるところ現代政治の無能さを訴えることを足がかりにし、
政治家として提示すべき「合理的未来」は何かを投げ掛けることが、本書の軸となっています。

この導入については、素直に「その通りだな」という感想でした。
特にコロナ禍中、連日記者会見などで政策アピールをするのを見ていて、
それはタレントに任せては?都のトップとしての仕事とは?と感じずにはいられませんでした。
「今の政治じゃダメでしょ」という訴えは、多くの共感が得られるところではないかと思います。

日本人が羨む未来が描かれる

では、堀江氏が描く「東京都のビジョン」とは何か。
前提として、中には明らかに炎上商法を狙った暴論、つまり話題作りか、も多々含まれています。
(←実際に都知事選に出馬しなかったことからも明らかと思います。
人気投票に勝ちたい人は、大麻解禁なんて掲げないよね(^^; )

私が素晴らしいと感じたものだけを抜粋。

・ダイナミック・プライシング導入による、渋滞・満員電車の解消
・現金使用禁止(完全キャッシュレス化)
・オンライン授業の導入

いずれも、技術的には余裕で可能でしょう。
中国では、既にロボタクシーが実用化されています。
(参考:「自動運転車のスタートアップのAutoXが上海でロボタクシーサービスを開始」)
それに比べれば、なんと可愛らしく親近感の沸く政策なのかとすら感じます。

しかしそれでいて、現代の政策には挙がらないであろう斬新さと、
ユーザーを確実に幸せにする合理性を備えた案だと思います。
疑問があるとしたら、税金の使途として費用便益が成り立つのかという点でしょうか。
しかし私は、少なくとも、こんな未来が来て欲しいと素直に思えるものでした。

何故この本は「絵空事」なのか

しかしこの本の読了後、多くの人はこう思うのではないでしょうか。
「そうだね、小説みたいで素晴らしいね、こんな未来が来て欲しいね。
けど、どうせ実現しないんでしょ?小説でしょ。絵空事だよね。

amazonのレビューを見ていただければ共感いただけるでしょう。
★1~3は言うに及ばず、★4,5の内容に限っても、
この書籍を「リアルな政策」と捉えている人は半数にも満たないのではないかと感じます。

それは何故か。

それは、堀江氏が出馬しなかった=本気で政策を実行する気がない、ということ以上に、
「政治家はしがらみやなんやかんやで、結局何もしやしない」と思うからではないでしょうか。
それは利権か、保身か、
無知か、怠惰か、
コロナ禍を初めとした、世界の変革についてこれない、老いた政治家への絶望。
私は、それこそが、この本を絵空事にしてしまう元凶だと考えます。

総評

堀江氏の「東京改造計画」は、確かに酷い暴論と感じるところも多々あるのですが、
底にあるものは、夢のある「政策」だと思います。
“ITの寵児”の慧眼の一端に触れることができ、大変いい勉強をさせていただきました。

この書籍を読了した後、感じたことは、
堀江氏の「もどかしさ」や「怒り」でした。
新しい時代には、新しい技術を、そしてそれを使える人間を。
この変革の時代に何も変わることができない東京に、そう訴えかけているように思えたのです。

これから先の将来、きっと、前述したような政策を論じられない人は、
「古い人間」として、政治家になってはいけないのだと思います。
「シン・ニホン」や「2030年の世界の地図帳でも論じられているように、
これからの日本の課題は、ITを活かすこと、そしてITを活かせる人材を育てることです。

堀江氏のようなITの最前線にいる方には、
現代の政治は、さぞかしスローでもどかしいことでしょう。

「東京は、そして日本は、ここまで変わることができるのか?」
その問いに、応えられる者は。

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