高市早苗「美しく、強く、成長する国へ。」をノート1ページ分に要約してみた。

書評
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高市早苗 元総務大臣の最新著書「美しく、強く、成長する国へ。」を読みました。
現在(2021年9月)総裁選の真っ只中で、初の女性総理大臣を志すような方の頭の中には、どんな考えが詰まっているのかを知りたくなったためです。

凄まじく濃密で、かなり読むのが大変でした。が、非常に勉強になる内容でした。様々な角度からの政策が書かれていますが、副題に「私の日本経済強靱化計画」とある通り、経済政策の比重が大きめですね。

総理になろうがなるまいが、是非実現してほしいなと思える施策が満載でしたし、
何より、現状日本が抱える課題、それを打破して目指すべきところは何処なのか、そのために何が必要で国として何をするのか、そういったヴィジョンが非常に明確に、最新の技術事情と共に力強いメッセージとして発信されており、自分の視野の狭さを痛感しました。

自分なりに咀嚼するため、また、せっかくの学びを忘れてしまわないよう、その内容を要約してみたいと思います。
あくまで自身のためのものなので、詳細や解釈の是非曲直については、本著を直接ご確認いただければと思います。

本著の主旨要約(ノート1ページ分)

基底理念

・国の究極の使命とは、下記を守り抜くことである

・国民の生命と財産
・領土、領海、領空、資源
・国家の主権と名誉

→日本人が大切にしてきた価値や精神的遺産を、未来の子供達につなぐ必要がある。

・努力した者が報われる「機会平等」の世の中であるべき。(×「結果平等」)

目標

上記を達するために、「強靱な経済」が必要
→それは、社会保障制度の安定性・継続性の確立に直結する。
また、安心感は、消費者マインドの改善に繋がり、更に日本に活力を生み出す。

まずはインフレ率2%の達成を目指す。
それまでの間、PB(プライマリー・バランス)規律を凍結し、国債発行を惜しまず行なっていく。

政策

上記のために必要な政策が、「サナエノミクス」(ニューアベノミクス)である。

(1)金融緩和
(2)(緊急時の)機動的な財政出動
(3)大胆な危機管理投資・成長投資

危機管理においては、生命を守るための「リスクの最小化」が最も重要。
そのための「危機管理投資」は、やむを得ないコストではなく、成長に向けた投資と考えるべきである。成長した課題対策は、海外へ事業展開することで、経済に還元されるためだ。

投資先

具体的な「投資先」は下記の通り。

事業

・医療、創薬
→必需品の国内生産、調達が行えるように、また、緊急時に新薬・ワクチンが実用化できるようにする必要がある。

 

・エネルギー

→進むデジタル化を迎えるため、次のような備えが必要。
(1)省電力化(6G、ネットワーク系、データセンターなどを対象に)
(2)各種発電の推進。
・再生可能エネルギー
SMR(小型モジュール原子炉)
核融合炉(2035年実用化目標)
を実用化し、活用していく。→原子力の平和利用

 

・気候変動への備え
→土木建築技術の変革への対応や、防災対策が必要。

 

・日本の強みがある技術
→既に世界を席巻するGAFAなどに対抗すべく、主にハード系、高品質・高耐久力を求められる分野を伸ばす。
・電磁波
・半導体
・産業用ロボット
・マテリアル分野
・量子工学
・漫画・アニメ・ゲーム
これらはテック・シナジーのある分野であるため、全てにおいてNo.1を目指す必要がある。

 

・地方の未来

(1)新しい働き方、暮らし方(地方でのテレワークなど)
(2)デジタルトランスフォーメーション(課題対応したら、ノウハウを海外に展開)
(3)地産地消型エネルギー需給体制(現在海外に流出している原料費を地場に回す)

 

防衛

・技術流出対策
→特に中国共産党を警戒した、情報工作、外国による投資と買収、人材引き抜きの防止が必要。
これらは同盟国・友好国からの信頼にも関わることであり、非常に重要。

 

・サイバーセキュリティ強化

→特に生活に直結する下記は、必ず守らなければならない。
医療航空鉄道自動車電力ガス水道金融クレジット。
また、政治的反撃やアクティブ・ディフェンスを行えるようにすることで、
攻撃者に、対抗策をとる意思と能力を示す事が重要。

 

・国防

衛生サイバー電磁波無人機による攻撃を防ぐための備えが必要。
また、自衛隊の対処を可能とし、平時から仕込みをしておく必要がある。

 

国としての対応

上記の投資を行なうにあたり、国として行なう対応は下記の通り。

・研究開発への投資・支援
・法整備、法改正
・人材育成
→特に、デジタル・AI人材の育成、国民に向けた情報セキュリティ教育社会制度周知のための教育、など

 

・税制

・控除:ベビーシッター等サービス利用時の税額控除災害控除給付付き税額控除

・増税:法人の現預金への課税炭素税

→勤労へのインセンティブを増やし、「分厚い中間層」を再構築する。

 

・「令和の省庁再編
→社会的課題の変容、技術革新を踏まえ、環境エネルギー庁情報通信省情報セキュリティ庁などを設置し、業務・窓口の統合・一元化を行なう。

 

新しい日本国憲法の制定
時代のニーズに応えるための憲法の見直し。敗戦後、占領下に草案されたものではなく、日本の心を持った、日本人の手による、新しい日本国憲法を

 

本著を読んでの感想

冒頭にも記載したとおり、
・現状日本が抱える課題
・それを打破して目指すべきところは何処なのか
・そのために何が必要で国として何をするのか
について、最新の技術事情を踏まえて現実的・実利的に主張がなされており、大変勉強になりました。
特にエネルギー、IT分野においては、聞いた事もない技術やプロジェクトが既に数多く動き出しているとのことで、自分の無知を痛感しました。

ロジカル

話が壮大でありながら、決して精神論・理想論を語るわけではなく、極力エビデンスベースでロジカルに話を積み上げているところも好感でした。
この方は、非常にリアリストなのだろうな、という印象を受けましたね。
要約と言う形だと伝わらないのが辛いところですが、各政策には事例として逐一、具体的な技術や企業名が挙げられており、説得力に溢れています。

 

ぶれない軸

最も素晴らしい点は、ほぼ全編にわたり、「危機管理投資」という軸がぶれる事なく論説されていることにあると思います。
目に見える課題にあれもこれもと手を出すということは、ある意味八方美人的なやり方です。どこぞのネタ政党は同時期、まさにこれを体現し、芯のない寄せ集め政策案を提示して大失笑を買ったわけですが、一方で高市氏の主張は「危機管理投資」とその先にある「成長への投資」に一貫されており、この方の信念・信条が見えるような気がしました

 

右翼的?

メディアでの受け答え内容から、「右翼的」と囁かれる高市氏ですが、本書からはさほど偏った国家主義観は見られなかったように思います。

左翼からすれば面白くないであろう内容満載だったので、如何にもそういう叩かれ方をしそうだなとは思いましたけどね。左から見たら大抵の者は右にありますから中国共産党を名指しで脅威扱いされていたり、結果平等を否定している=共産主義の否定ですし、日本人の主権を守るというあたりですら特亜の方々からすれば噴死ものでしょうからねぇ。

日本に住む日本人にとってみれば当たり前のことばかりなので、何の不快感も抱きませんでした。

 

総評

総じて、総理になるか如何に関わらず、現在の日本はこのような危機感を持たなければならないのだという啓発の書として、誰にとっても有意義な著書であると思いました。
どうか、これらの掲げられた政策が実現してほしいものです。というか実現しないと、今後コロナの比ではない規模の人命が危機に曝されるであろうことを思うと、高市氏個人ではなく自民党全体で取り組んでほしいと思います。(野党?うん、邪魔さえしてくれなければそれで。)

 

なお、結構難しい内容だったと思うのですが、「キミのお金はどこに消えるのか」「がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか」という漫画を読んでいるだけで、かなりついていけると思います。
この内容・・・漫画にあったやつだ!分かる、分かるぞぉぉぉおおおお!!」みたいな。(^^;
そちらも要約記事を書いていたりするので、よろしければ。↓

「がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか」の要約と感想
井上 純一さんの「がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか」を読みました。 前作・前々作も大変面白く、勉強になりましたが、 今作もためになる、是非とも世に知れ渡り、議論の的になってほしいものでした。 本の内...

個人的にどうかなと思うところ

・尤もらしく語られる技術や事例について、読者側でしっかりと裏取りして受け取る必要があるなと感じました。
挙げられた事例が素晴らしかったことの裏返しなのですが、特に核融合炉あたりのことは、本当にそんなに旨い話があるのだろうかと、逆に不安に心配になってしまいました。

 

・各投資は非常に規模が大きく且つ革新的であり、5~10年で結果が出るとは思えません。回収までの間、無尽蔵に国債を発行し続けることは、本当に大丈夫なのかと思ってしまいます。(MMT理論的には問題ないという見解なのだろうし、本著にもその旨は説明があるのですが・・・)

 

・6章に自身の実績を記載されているのですが、危機管理投資として掲げる規模の大きさからすると、比較的小規模なものに終始しているような印象でした。本当にこの一大政策を実現できるのかは、本書からだけでは図りかねるところです。
特に国防・情報流出への対策に関しては、左翼からボロカスに叩かれるでしょうから、本当に実現できるのか・・・いや、してくれないと困るのですが。

 

・過去の目標未達の政策として記載されていたので要約では端折りましたが、ネットで袋叩きにあったという「インターネット上の有害情報から青少年を守るための法律案」にだけは、やはり個人的には全く賛成できないなぁと思います。
まぁ、全部が全部の意見に賛成なんてことはあり得ないですし、こんなに政治家の言うことに納得したこともないくらいなので、それを以て「自由を侵害する人は総理に相応しくない!」などとは思いませんが。

 

・メディアでは金融所得税の増税を仄めかしていたり、消費税については据え置きの考えだったりしましたが、本著についてそれらについては記載がなく、要約に記載した「法人の預貯金課税」「炭素税」についてが全てでした。かなり増税志向という印象だったので、腹の内の全てを見せているわけではないというか、大事なところを隠していないか?という点は疑念が残ります。

 

・何より、「政治家は口だけ」というのが、残念ながらこの日本では誰もが持つ共通見解でしょう。壮大な公約を掲げたまま達成ゼロ全て嘘でしたという歴史が確実に存在しますし、今なお進行形でもあります。
「このマニフェストを本当に真摯に実行してくれるのか」という政治不信を拭ってくれる何かを見せて欲しい、というのは、私だけではなく国民の総意なのではないかと思います。
これは著書がどうと言うよりは、今後のメディアでの発言に注目、という感じですね。

 

蛇足(ノート)

当記事のタイトルで「ノート1ページ分に要約してみた。」と宣いましたが、ちゃんと私のノートでは1頁に収まってますよ、タイトル詐欺ではありませんよということで、私の手書きノートを貼っておきます。↓(画像が小さいうえ悪筆なため、読めないかもしれませんが・・・)

うーん、無理矢理感。笑
書き終えた後になって、[税制]は右の国策に含めるべきだったなと後悔。
B5ノートに下書きなしの一発書きは難しかったですね。A4に清書したら、もっと綺麗に収まるはず。

終わりに

と言うわけで、時事に乗った政治本の要約と感想でした。
なかなか読んで理解するのに骨が折れましたが、読む価値のある本だったなと思います。

世の中に政治不信が溢れている現代、政治家とはかく様に、民間をリード&サポートする存在であって欲しいものです。

総裁選は国民投票でないのが残念ですね。高市氏に頑張って欲しいなと思いました。

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