もはや年末の風物詩となったM-1グランプリ。今年も観戦しました。
今年は、昨年までの決勝進出メンバーが軒並み落選したことで話題になりました。
2年連続決勝進出したのは、真空ジェシカとロングコートダディの2組のみ。
昨年準優勝のオズワルド、3位のインディアンスをはじめ、高評価を残したモグライダーやもも、ラストイヤーだった見取り図、金属バットといった実力派、キングオブコントの王者となったビスケットブラザーズ、お茶の間に浸透済みのEXITやニューヨークと行った面々までが、悉く散っていったのでした。
過去にも、和牛が準決勝で落ちるといった波乱はありましたが、今年は特に厳しい印象です。特にラストイヤー組に対する容赦のなさは、今までに無い審査員の強硬な姿勢を感じます。それだけ本気度が伺える大会だとも言え、本放送をとてもとても楽しみにしていました。
そして今年の大会も、期待に違わず、大変面白い内容になりました。
また審査員ごっこをしながら、見ていて感じた事などを書いていきたいと思います。
見逃し配信↓
※サムネでネタバレしなくなってる!学習したね!偉い!
決勝10組
カベポスター
×型にはめすぎで柔軟性がない
×勢いのない言葉をチョイスするあまり、笑いも力が入らなかった印象
○独自性がある
×内容が普通。意外性がない
×終盤、しりとりになっているあたり、凝り方が方向性がおかしい
○安定感があるのはさすが。大舞台慣れしている。 [総評] ABCや上方お笑い大賞などの賞レースを総なめするだけあって、テンポや滑舌の安定感が素晴らしい。テンポが早くも遅くもなく、ネタも突飛さはなく王道的。トップバッターとして理想的だったのではないだろうか。
しかし、ずっと同じ構成で裏切りが無かったためか、笑いどころが少なかった印象。そして、盛り上がりどころである伏線回収=しりとりというのは既視感があるし、分かりづらいものだったためかイマイチ盛り上がりに欠けた印象。
どれだけ上手く安定感があっても、もはやM-1では爆発的な評価ポイントが無いと勝てないという、近年の大会レベルの高さが感じられる結果だったか。
真空ジェシカ
○ボケ一つ一つが大喜利的でしかもレベルが高い
×川北の間が不安定??
×ネタにいまいち統一感がない。オチもないみたいなもので雑に思えた
×展開にメリハリがなく、盛り上がるところがない
[総評] 昨年に引き続き、一つ一つのボケの質が高い。敗者復活戦を含めてもこの日ダントツだったと思う。
しかし一方で、全てのネタのレベルが同じくらいなので、緩急が弱かったのは勿体なかった。オチにかけて変化と盛り上がりがあると、より評価に繋がったのではないかと思う。
そして気になったのは、川北の喋り方だ。一つ一つ言葉を紡ぐような慎重な口調に思えたが、わざとだったのだろうか?緊張してるようにも見えたし、妙な間ができるので、見ていてこっちが緊張してしまった。
出順が早すぎたのも、彼らのスタイルにおいては不利に働いた点だっただろう。もっと場が温まっていたら緊張感もほぐれただろうし、小さな違和感も笑いの量で覆い隠されたかも知れない。うーん不運。
まだ若いコンビなだけに、テクニック面が足を引っ張ったという印象。これで経験が上乗せされてくると、とんでもないことになりそうだ。来年も決勝に残れる実力だと思うが、常連組として優勝を狙うのか、実力を見切られて落とされるのかという瀬戸際に差し掛かってきたように思う。2023年は彼らの分水嶺となるのではないだろうか。
オズワルド(※敗者復活枠)
○前半は静かに、後半にかけてテンポアップして盛り上がっていく展開
○敗者復活と変わらない、安定した演技
○ボケもそれまでの中からの引用があったりと、非常にコンセプチュアル
[総評]
まず敗者復活戦では文句なしに一番面白かった。あまりにも妥当な復活だったと言っていいだろう。
その勢いのままに行くか!?というところだったが、残念ながら審査員の点数は奮わなかった。原因はおそらく、「過去のオズワルドを超えられなかった」こと、即ち、彼らの自己ベストを更新できなかったことにあるだろう。期待値が高かったが故の厳しい採点だったのだと思う。このあたりは常連組として背負わざるを得ないハンデなのだろう。
真空ジェシカとは対照的に、テクニックは決勝の面々の中でもピカイチだったと思う。しかし、今後M-1で勝とうと思ったら、今までに無い全く新しい武器の発明が必要になるだろう。難儀な立ち位置になってしまったな。
ロングコートダディ
○常にドタバタ音が鳴っていて賑やかなのは新しい、テレビの賞レース向けの演出
○今までに見た事がない題材と構成
○大喜利の質が高い
・最後に盛り上がる展開を作っているところが戦略的。ただ、伏線回収というほどではなくやや底が浅かったか
×オチがややおざなり。
[総評] とにかく新しい試みに溢れていること、ネタの構成が極めて戦略的だったことが印象的だった。相当M-1を研究してきたなと思う。ネタ披露時点でトップに躍り出た事は順当だった。この日はここから盛り上がっていったと言ってよく、番組的には最大の功労者だったのではないだろうか。
これがコントになると、何故あんなイライラするものになってしまうのか・・・答えは偏に、兎のキャラの濃さにあると思う。彼をボケ一辺に回すと、サイコ過ぎて論理が成立しない。その点、この漫才におけるWボケ的な立ち位置は、彼らの魅力をバランス良く見せるナイスチョイスだったと言えるだろう。
さや香
×前半、ツッコミ側の妙な間が気になる。緊張?
○題材が普遍的で誰もが理解し共感できるネタ
○おとん81・・・?笑
○佐賀いじり。地方ネタは鉄板ですなぁ
○免許奉納笑
○ボケがどんどん繋がってくる、考え抜かれたクレバーな構成
[総評] 前年の敗者復活でバカやってた人等とは思えない笑、正統派な漫才だった。決勝には返り咲きということだが、5年前とはクオリティが段違い。磨き抜かれた感のある、完成されたネタだった。
まず何より、ネタ選びが秀逸。免許返納は時事を捉えているし、地方いじりという普遍的な題材は、幅広い年齢層に受け容れられる、正に王道漫才だと言えるだろう。2つのテーマが交錯していく展開も素晴らしい。これは劇場で鍛えられたものだろうか。
飛び道具的なスタイルが横行している昨今、一つ前のロングコートダディもかなり異端なスタイルだったが、王道で以てインパクトで見劣りしないところは彼らの技量の成せるところだったと言えるだろう。
これぞ漫才というべき、感動すら覚える素晴らしい出来だった。 [後日追記] さや香一本目のネタが何が素晴らしかったかと言えば、「強い本テーマと強い副テーマの並列」が画期的だったことではないかと思う。
漫才のネタは普通、一つのテーマに沿ってボケを展開していく事が多い。例えばミルクボーイをとってみれば、あくまで「コーンフレーク」というテーマがあり、ボケの内容はそれに関係するものを挙げていっていることが分かるだろう。
逆に言えば、テーマと全く関係ないボケは「脱線」であり、賞レースにおいては特に評価されづらい傾向にある。嘗て「一発ギャグの寄せ集め」で優勝した芸人はクラシック三冠においては存在しないし、決勝進出者の中でも稀な事は明白である。
(※強いて言うなら、霜降り明星はその傾向が強かったように思う。「豪華客船」というテーマはあれどかなりボケの内容は自由だった。個人的には、あれがギリギリのラインだと思っている。)
一方でさや香の一本目は、「免許返納」という強い共感を得られるテーマを持ちながら、途中で「佐賀いじり」という副テーマが展開される。これはかなり珍しい形だ。本質的には「免許返納」と「佐賀いじり」は全く関連性がない。佐賀のくだりはなくてもストーリーは綺麗に起承転結が整っているのだ。先の喩えの通り、本来ならば完全なる「脱線」と低評価されるはずのものなのである。
では何故これが評価されたのか?その理由として考えられることを挙げると、
1. 「佐賀いじり」が、本テーマの扱いでも成立するほど共感性の高いテーマだった
2. 「佐賀いじり」は時間割・再利用といった工夫によって、「脱線」から「副テーマ」の扱いに向上されていた
といったところだろう。
特に2.が秀逸なので詳述したい。
ネタの前半は、あくまで本テーマである「免許返納」を主軸に展開される。
これらの内容を表現にバリエーションを持たせながら見せていく。正直この段階で既に相当上手い。
そして、最後の「特典」のくだりで登場するのが「佐賀いじり」である。
・俺一生佐賀行かん
・人間が普通に生きてたら佐賀に行くタイミングなんかない
・佐賀は出れるけど入られへん
・お前のおとんの田舎とか知るか
→確かに本テーマに沿った導入をしているものの、なんとなくここだけ独立した印象があったのではないだろうか。その理由は単純に、他のボケよりも時間が長いためである。具体的には、時間にしておよそ30秒をこの「佐賀いじり」に当てている。参考までに、「クリ-ピーナッツ」のくだりが15秒である。当てている時間が長いので、当然視聴者の印象に残る事になる。よってここだけが独立したような印象になるのである。これが私が「佐賀いじり」を「副テーマ」と表現している裏付けのひとつである。
更に「佐賀いじり」は、オチにも再利用される。客観的に見ればおかしい話だ。「免許返納」のネタであるにも関わらず、オチは「佐賀は出れるけど入られへん」なのである。その前に放った「免許奉納や!」という改心の一撃を以て終わる事も出来たはずであるし、その方がストーリーとしては綺麗だとも言える。
では何故、オチを「佐賀いじり」にする必要があったのか。それこそがこのネタの面白いところで、それがないと途中のくだりが「脱線」になってしまうからだ。
オチが「免許奉納」だった場合、このネタはあくまで「免許返納」がテーマであり、佐賀いじりはそれに準じたボケのひとつでしかなかった、ということになる。すると、「佐賀のくだりだけやけに長かったな」というアンバランスさが生まれてしまったことだろう。それを、オチに再利用して「伏線回収」のような構図を作る事で、副テーマと呼べる「重み」を得たのである。これによって、<「免許返納」という強いテーマと「佐賀いじり」という強いテーマが並列する、けれどあくまで「免許返納がメインですよ」という絶妙な力加減によってコンセプト性を保ったネタ>という、複雑な構成が生まれたのである。
繰り返しになるが、これは漫才至上の中でもかなり珍しいはずだ。コンセプト性が重視される対・賞レース用のネタとしては、テーマは1つに絞る方が圧倒的に簡単で分かりやすい、即ち評価されやすいのだ。普通は皆そうする。
しかし一方で、4分を飽きさせないバリエーションを出すためには、1つのテーマを貫き通すことはかなり難しい。今大会においても審査員から「展開がない」「やってることが終始同じ」という理由で低評価を受けたネタは多い。年間で7261組もの芸人の頂点に立った10組でさえ、「4分間」「コンセプト性」という縛りの中で面白く在り続けられることは希有なのである。
それを「並列するテーマ」という構成で打破した革新性こそが、さや香が最高に評価された理由なのである。
そして何よりこのネタのヤバいところは、「個性やキャラクターに依らないため、構成のコピーによって模倣できる」点である。極論、このネタは誰がやっても面白いし違和感がないことだろう。例えば決勝前に落選となった見取り図やミキといったしゃべくりスタイルの芸人が同じネタをやっていたなら、きっと同様に1位通過する程度の評価は得られただろうと確信している。何故なら、評価ポイントは「ネタの構成」にこそあるからだ。
今年、これだけの評価を得たこの「免許返納」ネタは、来年は多くの芸人に研究され、模倣されるのではないだろうか。勿論それには非常に高い作家性を必要とするだろうから、易しくはないだろう。しかし、それが出来た人たちが複数人現れる事にでもなったら、M-1のレベルは更なる激化を辿るのではないだろうか。
それくらいに、このネタは芸術的であり、革新的であり、革命的だったのである。
男性ブランコ
×ドタバタの仕方が昭和的。奇を衒ったというには既視感がある。
×終始同じ方向性で展開がない
[総評] キングオブコントで名を馳せた、コントのイメージの強い彼らだったが、それとは一味違う、映像を想起させるアプローチにはとても好感を覚えた。
さや香の王道漫才の後という出順は、変化球的な彼らのネタにとってはかなりいいように働いただろう。しかしそれを踏まえて650点というのは少々物足りない。
そして、奇を衒ったにしては昭和的で、既視感や古臭さを感じてしまった。レトロと新機軸のどちらにもつかずの中途半端な方向性になってしまった様に思う。出来に反して低い点数は、題材が審査員と観客を置き去りにしてしまった結果だったのではないだろうか。
彼らの世界観を表現するには、やはり小道具があった方が効果的であるように思う。やはりコント師なんだなと感じた。個人的に、漫才としてはそこまででもないものの、その分来年のキングオブコントへの期待は高まった。彼らの今後はまだまだ明るいだろう。
ダイヤモンド
×面白かったと思うが、客の笑いがついてこない感じ。説明不足だったのでは
×変な語尾を混ぜてくるので、気になってネタの本筋に集中できない
○ローソンのくだり笑
×やっていることが最初から最後まで同じで、展開や驚きがなかった
[総評] とにかく頭の良いネタだったと感じた。「新しい言葉が生まれることで、元々ある言葉の呼び名が変わる」というレトロニムに着眼し、それを列挙していくというテーマだったわけだが、ネタを挙げていくのはかなり大変だったのではないか。
しかし、見せ方が勿体なかったと思う。冒頭でレトロニムというテーマを説明していれば。下手に語尾という要素を混ぜずネタに集中させていれば。せっかく面白いテーマだったのだから、それに最大限スポットライトを当てるような構成にしていれば、もっと面白さが伝わったのではないだろうか。
それにしても、充分に温まった会場で、これだけ秀逸なテーマなのに、会場の笑いが控えめだったのは意外だった。確かに分かりやすいネタではなかったが、そんなに?という感じ。やはり舞台は水物というか、我々素人が部屋でぬくぬくと批評するのとは訳が違い、命がけの戦場だということなのだろう。そう思うと、決勝の舞台で噛む事もなくネタを完遂するファイナリスト達は、それだけで並々ならぬの度量なのだなと改めて痛感した。
ヨネダ2000
感想]
○妙に癖のあるテンポがとても心地よい
○登場人物全員、妙にノリがよくてウケる
○多数の人物の演じ分けがシームレス
○音声的な空白がないため、盛り下がらない
[総評] 究極の飛び道具である彼女らの出順が後ろの方になったことは、非常に有利に働いただろう。笑神様グッジョブ。
昨年の敗者復活戦でのネタも奇想天外なリズムネタで、漫才というよりはモダンアートの領域だと感じたものだったが、今回は適度にツッコミも混ぜつつ彼女らの個性と強みをフルに発揮する構成で、漫才として一皮むけたなと感じた。
全てを自分たちのペースに巻き込んでいくような独特の世界観とリズムの心地良さが素晴らしい。残念ながらファイナル進出はならなかったが、「フェミな香りのない個性派女性芸人」の最高の宣伝となっただろう。2023年からきっと忙しくなるぞ。
キュウ
×それを枕に取り入れるなどの柔軟さがあっても良かったのではないかなと思う。運を生かせていないというか
×生牡蠣とドッチボールといい、なぞかけや展開の先が読めてしまう
×台詞がいちいち演技がかっているところは好みが分かれそう
○途中で「全く同じ物」「なぞかけ」になるなど、展開が豊富
×せっかく展開したのに、ボケが一辺倒でくどい
×「全然楽しくないでしょう」って言っちゃダメだろ。楽しい事を言うのがお前等の仕事なんだよ
[総評] 過剰なまでにシステム化した漫才というのが彼らのスタイルなので、彼らなりに出し切ったのだろうが、私としては型にはまり過ぎてて観客を蔑ろにしているなと感じるところが多々あったように思う。点数も奮わなかったのは、ローテンションからの芝居がかったノリの展開が、この日の客と審査員にはハマらなかったということなのだろう。
特に問題だったのは、ネタ後のトークで「上手いでしょう」を連発しすぎて、会場が静まりかえってしまった事である。本人達はキラーフレーズのつもりだったものが、客には飽きられてしまったことが明白で、温度差が、着眼点のズレが露呈していた。ネタが響かなかったのもそういうところだろう。
ネタ順の影響もあったのだろうが、会場にハマりづらい、汎用性の低すぎるスタイルだなと感じた。今後飛躍を目指すのなら、今のスタイルに大衆性を持たせる何かしらの発明が必要だと思う。
ウエストランド
×恋愛映画にはパターンがないなどの的外れなディスり
○この時代、毒舌漫才は希少ではある
○ディスってるだけのようでいて、「警察に捕まり始めている」を連呼するなどパターンがあり、笑いを誘う箇所を意図的に作っている
○オチが綺麗に決まった
[総評] 2020年に決勝に進んだ際は、「誰も傷つけない漫才」に噛みつく負け犬の遠吠え的な胸糞悪いものだったが、今回も難癖をつけまくるだけの一般受けしない内容だった。全く、これでよく決勝に残れたものだ。
毒舌漫才の肝は、調子に乗ってるやつ、実力が無いのに売れてるやつといった「悪」を斬ることで、聴者の共感を得られるかどうかだと思う。しかし彼らのターゲットは、恋愛映画やYouTuberなど、およそディスることに全面的な支持を得られないものばかり。また、内容的にも「ウザい!なんかウザい!」というように中身がない。小学生が自分の嫌いなものに「ばーかばーか」と言っているのと大差ないのである。なのでディスりに納得がいかないし、聞いていて反発が生まれてしまって笑いに繋がらない。つまるところネタ選びにも表現方法にもセンスがない。単純に自分の嫌いなもの・羨んでいるものに噛みついてるだけとしか思えない、相変わらずの負け犬の遠吠えだった。
このままで行くなら、おそらく今後も、彼らが大きく売れることはないだろう。
というように私の中では全く評価に値しなかったが、まさかのファイナル進出には驚きを隠し得ない。審査員の中にも近年の「誰も傷つけない笑い」という風潮への反発があったのだろうか。2018年のジャルジャルあたりから活発になったこのブームへのアンチテーゼとも言える彼らのスタイルが評価を得たのは、時代の変わり目を感じさせる、なかなかにセンセーショナルなことであると思う。
ファイナル3組
ウエストランド
×やはり毒舌が的外れ。聞いてて納得がいかない
×笑いにメッセージ性は要らないという向上心のなさ。全く共感できない
×もはや喋れてないやん。特にフライヤーのあたり
[総評] 一本目と全く同じ感想。私にとっては、2本続けて的外れなディスりを聞かされる、悪夢のような時間帯だった。
しかも二本目では言葉が渋滞しているというか、プロとしてあるまじきたどたどしさも見られて、あまりにもレベルが低かったと言わざるを得ない。
ロングコートダディ
○歴代の誰とも被らない、唯一無二の発想
×ツッコミで右手を高々と挙げるところは、狙いすぎだと思う
○締めの言葉が「もう江戸(もうええわ)」なの細かくて良い笑
×やってることが終始同じでメリハリがない
[総評] 細かいところに工夫があるのは分かるし、題材もボケの内容も斬新で良いのだが、ファイナルとして相応しいネタなのかと言われると・・・特にツッコミが右手を高々と挙げるところは、大衆に迎合したなと感じてしまった。もっと彼らなりの世界観に忠実であった方が好感が持てたように思う。
さや香
○言葉のチョイスが素晴らしい
○「みゆ、惜しっ」のところの緩急の付け方◎
○「モヒカンは坊主の方」笑
×「途中からツッコミがヤバい奴に」というのが笑いどころだったのは分かるが、普通に引いてしまって笑いが途切れてしまった
×オチが決まってない
[総評] 一本目が素晴らしすぎたためか、二本目はかなり弱いというか、雑に感じた。「途中からツッコミがヤバい奴に」という展開を狙ったのもよく分かるのだが、一旦引かせて笑いが途絶えてしまう前提のネタは結果的に悪手だったように思う。
しかしやはり、王道しゃべくり漫才として圧倒的だったし、テレビ的なスター性もあると感じた。来年のリベンジこそが、優勝に向けた最大のチャンスとなると思う。
総評
最終的な、審査員(と私)の点数のまとめは下記の通り。
(赤は審査員毎の最高点、青は同最低点。)
No. | 演者/演目 | 山田 | 大吉 | 塙 | 富澤 | 立川 | 礼二 | 松本 | [合計] | 私 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | カベポスター / 大声大会 | 84 | 94 | 92 | 93 | 89 | 92 | 90 | 634 | 64 |
2 | 真空ジェシカ / シルバー人材センター | 95 | 92 | 92 | 92 | 94 | 94 | 88 | 647 | 80 |
3 | オズワルド / 夢と現実 | 87 | 93 | 90 | 90 | 95 | 92 | 92 | 639 | 85 |
4 | ロングコートダディ / マラソン世界大会 | 94 | 92 | 94 | 96 | 96 | 95 | 93 | 660 | 86 |
5 | さや香 / 免許返納 | 92 | 96 | 95 | 97 | 95 | 97 | 95 | 667 | 92 |
6 | 男性ブランコ / 音符を運ぶ仕事 | 86 | 91 | 92 | 95 | 94 | 96 | 96 | 650 | 71 |
7 | ダイヤモンド / レトロニム | 86 | 90 | 88 | 88 | 88 | 89 | 87 | 616 | 79 |
8 | ヨネダ2000 / イギリスで餅をつく | 90 | 91 | 96 | 91 | 97 | 90 | 91 | 647 | 89 |
9 | キュウ / 全然違うものに思えてちょっと同じもの | 87 | 90 | 88 | 90 | 89 | 90 | 86 | 620 | 66 |
10 | ウエストランド / あるなしクイズ | 91 | 93 | 93 | 94 | 98 | 96 | 94 | 659 | 63 |
<ファイナルジャッジ>
No. | 演者/演目 | 山田 | 大吉 | 塙 | 富澤 | 立川 | 礼二 | 松本 | 松本 | 私 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ウエストランド | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 64 | |
2 | ロングコートダディ | 75 | ||||||||
3 | さや香 | ○ | ○ | 78 |
まず、私としては、下記のような結果になると予想していた。
敗者復活にはオズワルドがくると思っていたし、実際、内容を見た結果、個人的にはほぼ予想通りの採点になった。
それでも結果は全く異なるのだから、全く世の中は儘ならない・・・
全編を通しての感想としては、「M-1における勝ちパターンを研究してきた組が多かったな」という印象だった。
良く言えば、安定した笑いを出せるレベルの高い戦いだったと思う。しかしその反面、競技として最適化されすぎているというか、小賢しさが目立つ感じで、テクニックやセンスと言った、真の実力や才能を測るものではなくなってきてしまったなと感じた。
その点において、さや香の一本目は本当に素晴らしかった。これぞ漫才、これぞ演芸というべき完成度で、私はこの時点で本日の勝者を確信していた。そういう意味では、二本目は正直物足りなかったのが残念すぎた。優勝を逃したのは、大きすぎた一本目への評価の裏返しだったのではないだろうか。
ファイナルにおいては、毒舌 vs 奇抜 vs 王道 という、綺麗に個性の別れた決戦となった。前述したとおり、「毒舌」がファイナルに残ったということ、そしてあまつさえ優勝してしまった事は、時代の潮流からすれば驚愕すべき事である。ウエストランドは、私としては全く評価に値しなかったが、大御所等が現代のお笑いに対してどのように思っているのかが垣間見える結果だったのではないだろうか。
重ねて言うが、私はウエストランドを全く評価できない。テクニックも明らかに未熟、題材の選定もそれに対する言及も的外れで大衆性がない、そして何より、見終えた後に爽快感がない。M-1至上最高に納得のいかない、最低の王者だと思う。本当にしょうもない結末になってしまった。
断言できるが、このまま行くのなら、来年以降も彼らが売れる事はないだろうし、2024年には露出もなくなるだろう。もし今後彼らがスターの道を歩むのなら、私の見る目がなかったと是非とも笑ってくれ。
私的MVPはさや香の一本目だったことは間違いないが、それとは別に嬉しかったのは、ヨネダ2000というモンスターが一定の評価を得た事だ。THE WにおいてはM-1とのネタ被りを避けるために敢えてコントを選択したのだろうが、彼女らの本領はやはり漫才でこそ発揮されるものだと思う。女性芸人としての新機軸という意味でも、漫才とアートの融合という点でも、彼女らの今後に期待して止まない。
終わりに
というわけで、M-1グランプリ2022の審査員ごっこ(感想)でした。
正直、相当にレベルが高くて良い大会だっただけに、私的に全く納得のいかないウエストランドの優勝は心の底から残念ですが・・・それもまた勝負の世界ということなのでしょうね・・・
私としては、彼らは「M-1王者至上、最も売れなかった芸人」になると予想しています。そしてそれは、M-1という覇権に翳りを差すことになるのではないかという不安でもあります・・・が、さや香やヨネダ2000という才能が世に放たれたというポジティブな面もあり、かけ値なく、やはりM-1は素晴らしいなという気持ちでもあります。
新たな才能に刺激され、来年から漫才に更なる進化が訪れることに期待したいと思います。
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