amazonオリジナル映画「トゥモロー・ウォー」は、『未来人が脳筋すぎて世界がヤバい』という話でした

映画評
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2021年7月2日公開のamazonオリジナル映画「トゥモロー・ウォー」を観ました。
(カタカナで書くとなんともダサいですね。「The Tomorrow War」です。)

amazonオリジナルとは言いながら、独自スタッフで作ったというわけではなく、
amazonは公開権を買った形の作品のようですね。

良くも悪くもざっくりと大味な内容で、まぁまぁよかったのですが、
このためにamazonPrimeに入会するかと言えば、それは明確にないな、という感じでしょうか。

なんともツッコミどころの多い内容という意味では、逆に面白かったので、
話のネタにすべく、書き留めたいと思います。

なお、以下には鑑賞済みを前提に、ストーリーの根幹に関わるネタバレを含みますので、ご注意ください。
尤も、ストーリーが全てネタバレしたところで、この映画の評価は何も変わらないと思いますが

あらすじ・概要

タイムトラベラー達が緊急のメッセージを届けに2051年からやってきた。
その内容は今から30年後のミライ、人類はエイリアンとの戦争に敗れるというものだった。
人類が生き残る唯一の希望は、今、ここにいる兵士や民間人をミライへ送り込み戦いに参加させる事。
娘のために世界を救う事を決意したダン・フォレスターは、地球の運命を書き換えるため、優秀な科学者と疎遠になっていた父親と結束し戦いに挑む。
(amazonより引用)

まぁ確かに、嘘はついていないあらすじですね。
ただ、もう少し具体的に且つ端的にストーリーを紹介すると、こうなります。
↓(超ネタバレ注意)

ストーリーの要約
・我々は未来から、タイムマシンで過去(現在)にやってきた!
30年後、人類はエイリアンに食い尽くされる!

だからこの時代の民間人を、兵士として未来に送り込んでくれ!
30年以内に死ぬやつだったら別にいいよな!

・未来にジャンプ→「すまん、着地座標がずれたわ」→ほぼ全滅

・残りもキモいエイリアンに食われまくる

・なんとかエイリアンどもに一泡吹かせたい・・・
そうだ!繁殖元の雌を捕獲して、あいつらを皆殺しにする毒を開発するんだ!

毒はできたけど人類はもう滅亡だ過去に持って行って量産してくれ!

・現代のエイリアンは氷の下に埋まってると高校生の火山マニアが言ってたぞ。
目覚める前に毒で皆殺しだ!

・うわー、毒で殺す前にエイリアンを起こしてしまった-。やっぱり爆弾とナイフで戦うだー。

エイリアンは死に、世界は救われた。「俺にとってかけがえのない未来は今だ」

訳が分かりませんか?私にも分かりません。
唯在るのは、この通りにストーリーが展開していくという事実のみです。

なお、「全然『明日(Tomorrow)』の話じゃないじゃん?」と思うかもしれませんが、
Tomorrowには”将来”という意味があるようなので、タイトルは「将来訪れる戦争」的なニュアンスなのかなと思います。

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バッド・ポイント①稚拙すぎるストーリー

前述のあらすじでお分かりの通り、もうストーリーが酷すぎて、逆に面白いレベルです。
何が酷かったのかを具体的に記述してみます。

一つ一つの行動に必然性がなさすぎる

この脚本の駄目なところは、意味ありげな行動を始めるものの、それが何一つ意味をもたらさないという点です。例えば、

・過去に行った人達の犠牲が何も報われてない
 →そもそも到着と同時に空から撒き散らしてほぼ全滅してますし、
命がけで回収させたアンプルは、作中では特に何にも使用されず。
わざわざ多大なコストを掛けて過去から徴兵する意味ありました?というお話。

 

・全人類の希望を賭けて開発した毒が、全く役に立っていない
 →あれだけの犠牲を払い、人類最後の希望として開発されたはずの毒、
その効果は、せいぜい5~6体を殺した程度で打ち止め。
その後10体以上の群れが見つかると、毒殺を諦めて爆破へ
未来ミューリは唯の犬死にだった、と思わざるを得ません。

 

・「こんな時こそ科学が重要」と言っておきながら、ひたすら火力による解決。

→前述の通り、科学の結晶である毒は全く役に立てられず
一番活躍したのはどう考えてもショットガンとダイナマイトでした。
主人公の化学教師としての見せ場は一切なし。その設定、要らなかったのでは?
まぁ、火力も科学ではあるのでしょうが・・・

 

・毒を持ち帰るのが主人公である必要がない。

→主人公はミューリの父親だから過去に呼ばれた、などと言っていましたが、
毒を持って帰るだけなら誰でもよかった、且つ誰か一人で充分だったのは明白です。

というか、量産させたいのに毒の実物を持って帰らせるってどういうことよ。解析してる間に世界滅ぶわ。レシピをお伝えしなさいよ。

 

・7日間しか未来にジャンプさせない
 →渡航時間を制限する意味がありません。毒を入手するまで帰らせなくていいのでは?
技術的な制約なのかとも思いましたが、だったら未来人達も過去に留まれないはず
徴兵を納得させるための策?けど、ずっと残っていたそうな人も帰しちゃってますしねぇ。
どうも浅はかな、「タイムリミットあった方が燃えるんじゃね?」くらいのノリで作った設定な気がしてならないんですよねぇ。

 

結局は、無駄なことを延々と繰り返しては死人を出しまくり、最終的には視聴者(というか私)に「あれは全て無駄な犠牲だったんだ・・・」という絶望感を味合わせてくれたままでハッピーエンドを迎える、という散々な結果に。
ここまでグダグダなストーリーはなかなか久しぶりでした。

 

未来人の作戦が脳筋すぎる

何より、未来人の立てる作戦は本当に杜撰で頭が悪く、終始に渡って溜息ものでした。

唯の民間人の有象無象を兵士として戦わせるという、そもそも無謀な発想
・過去から連れてきた兵士を即、空から落下させ、集団自殺させることに
・過去からわざわざ連れてきた兵士に「そこは焼き払うから逃げろ」
・エイリアン雌の捕獲の際、原始的なロープで引っ張って檻に入れる、という力業
薬で弱らせるなどせず。→当然、滅茶苦茶抵抗され、何人も吹っ飛ばされる。
(なお、鎖も鎮静剤も存在はしており、拘束のシーンでは立派なそれらを使っている。)
・捕獲したエイリアン雌を、雄が奪還しにくるのが分かっていながら、
タイムマシンという超重要な設備のすぐ隣に拘束しておくという愚行
(結果、タイムマシンは「ついでに」破壊される)
毒の開発を始めたのは最後の最後になってから
タイムマシンを作ってる暇と技術はあったのに?

いやいや、馬鹿すぎるでしょう。そりゃ人類滅びますわ
逆に「こんなに馬鹿だから人類は滅びた」という演出なのかな、と思うほど。


 

展開が雑すぎる

その他、単純に映画としての伏線回収も、雑を極めていました。

 

・自分が家族を捨てる未来という重厚な伏線が、最後まで説明されない
 →おそらく、不仲だった親父殿を頼り和解する事で回避した、と言いたいのでしょうが、だいぶ分かりづらく、因果としても遠い感じがしてしまい、イマイチ納得できませんでした。(本当にそうかも分かりませんし)
・クラスの高校生火山マニアが、エイリアンの巣の場所を瞬殺で言い当てる

→そもそも唐突に登場しネタ扱いされる「高校生火山マニア」という存在が意味不明ですし、
それが後半に唐突に活躍させて「伏線回収したぜドヤァ!」みたいなことされても・・・無理矢理感半端ありませんわ。

 

 

総じて、ストーリーに関しては「中学生が名作映画を継ぎ接ぎして作った感」くらいのものですね。だいぶポジティブに言うとですが。

 

バッド・ポイント②リアリティのない心理描写

そして、よりついて行けないのは、そんな無茶苦茶な状況に何一つ疑問を呈さない登場人物達です。

・民間人が徴兵されエイリアンに食わされるのに、誰一人発狂することもなく、暴動が起こることもない、物わかりの良すぎる兵士達

(どうせ自分は近年中に死ぬから諦観している、という言い訳はギリギリできますが)

・未来に到着と同時に空から落下させられても、誰一人、文句の一つさえ言わない

→死ぬところだったぞ!とか、仲間が皆死んだぞ!とか、言うべき事が何かしらあるでしょうに。

・見ず知らずの他人に「あそこの角にエイリアンがいないか偵察してこい」と命令され、
快諾する民間人

 →普通、嫌でしょう・・・何故そこまで初対面の男に従順なのか。

一切の自己表現をしない未来軍人達

→この絶望的な状況の中、彼らは何のために戦っているのか?という描写が一切ありません。
おそらく、人類は負けない!とか、差し違えてもエイリアンだけは殺してやる!の様な
熱情があるのだと思いたいところですが、本気で何一つ言葉を発さないので、
まるで洗脳されたロボットです。ある意味エイリアンより怖い。

 

・「生き方は俺が決める!」と叫びながら、躊躇なく仲間を巻き込み自爆する民間人

→いくら繋がりの浅い仲とは言え、そんなメンタルの人間、ヤバすぎです。

 

・過去(現在)でエイリアンを死滅させた後に、一切思い出されない未来ミューリ

→いくら現在の娘が存命と言っても、少しくらい思い出してあげてくださいよ・・・
所詮、人は現在のみにしか生きれない、という暗喩なのでしょうか。



エトセトラエトセトラ。他にも挙げればキリはありません。
一言で言えば、登場人物が全く人間的でないのです。或いは、人間的である事が描かれない、というべきかでしょうか。
喩えるなら、筋書きを追う事に必至になりキャラクター造形を怠った三文小説、という感じです。
そんななため、どうにも感情移入できず、薄っぺらい印象となってしまいした。

 

バッド・ポイント③露骨に感動させようとしてくる

このように、滅茶苦茶なストーリー雑極まりない描写のため、なんとも感情移入できないうえに、
とってつけたように「感動的だろ?ほら泣けよ」と言わんばかりの露骨なシーンを幾つも挟んでくるので、なんともお寒い気持ちになります。

特に未来ミューリが絡むシーンは、未来軍人達の脳筋っぷりが背景にあるため、どうにも共感できず。
作品全体が醸し出す説得力というのは、こういうところで決まるものなのだな、と。

グッド・ポイントを箇条書きで

などと酷評してきましたが、冒頭に述べたように、
「細かい事を言わなければ、まぁ面白かったと言える程度の出来」ではあるかなとは思います。

評価できるポイントについても書いておきましょう。

・アクション、CGの絵が綺麗
→何をおいても、これはアクション映画です。ストーリーなど二の次、迫力のあるバトルやしっかりとキモいエイリアンを描くことが正解にして最優先事項なのでしょう。
その点においてはよき映像作品だったと思います。
・序盤からクライマックスまでの緩急

→序盤はバトルシーンなど一切なく、戦争とは離れた日常が描かれます。
また、いざ未来に行ってもすぐにバトるわけではなく、物陰に潜むような、得体の知れないモノが潜んでいるような緊張感をしっかりと引っ張ります。
実際にエイリアンが出てきて派手にドンパチが始まったのは、上映開始からおよそ50分後
そこから怒濤のアクションシーンが続き、クライマックスの火の海まで、熱量が上がり続ける構成でした。
単純に、見ていてハラハラする時間が続くので、楽しいと思えることでしょう。

・未来の戦争のために、現代人を徴兵していいのか?という考えさせられる問題提起
→「誰だって戦争には行きたくない、ましてや一見自分には関係ない、
けれど行かないと自分の直径の子孫は間違いなく滅んでしまう・・・
そんな状況で、人は戦うことができるのか?」
これは何気に深いテーマではないでしょうか。このテーマで一本観たかったくらいです。
結局このテーマはほぼお飾りと化し、ただのドンパチ映画に終わってしまったのが、大変残念なところですが。
・不仲だった親父殿との共闘

→これもあざとい演出なのでしょうが、熱いものは熱い、そして良い。

総評

2流か?3流か?で評価に悩むくらいの出来だと思います。
「派手な映像がとりたいが為に適当にでっち上げられた、残念ストーリー」がとにかく気になりました。
ストーリー重視派は、観ていて苛々すること必至です。全くお薦めできませんね。
クリストファー・ノーランの爪の垢を煎じて、鼻を摘んで流し込んでやりたいくらいです。

映画「プレステージ」のドキドキ感のタネは何だったのかを考えた日
amazonのPrimeVideoで、映画「プレステージ」を観ました。 事前に「超面白い」と聞いていたので、ハードルは非常に高い状態で臨んだはずだったのですが、 それを裕に越えてくるくらい面白かったです。 正直、マジッ...

 

しかし、その分力を入れたのであろう映像はとても良いので、
「アクションものが好き!細かい事は気にしない!爆発サイコー!」という人は全然楽しめると思います。
中でも、未来ミューリが火の海に呑まれるシーンは、美しさと悲壮さを備え、なかなかのものでした。

 

あらゆる意味で、もっと面白い映画は山ほどあると思います。
ので、わざわざこのためにamazonPrimeに入会する必要は皆無、と断言できます。
ただ、他の名作が無料になるという点で、amazonPrimeはそもそも既にお得なサブスクだと思います。まぁこの作品はオマケ程度のものくらいに思うのが一番健康的なのではないでしょうか。

コメント

  1. 通りすがり より:

    劇中冒頭のワールドカップの対戦カードがブラジルとよくわからない国旗のチームで、どこだろうと検索したらここに辿り着きました。

    物語の各種設定の雑さにノーランの爪の垢を煎じて飲ませたいのは同意ですが、いくつか認識が違ってる点があるのでツッコミます。

    ・落下地点
    未来の人も普段から空中に兵士をばら撒いて楽しんでるわけではなく、本来は地上から3メートルの位置に放り出される予定が、ダンのジャンプの際は転送中たまたまエラーが発生して空中になってしまったという展開だったようで、毎回アレではないようですね。
    (このたまたまというのも無茶だけどなっ!)

    ・毒
    毒自体は多分前から開発してたのが、メスには効かないという事が段々わかってきて、難儀して時間が掛かってるという説明だったかと思います。
    また研究所から持って帰ったアンプルを利用したものの中から結果的にメスにも効く毒が開発されてるので、研究所に行ったのも一応無駄ではなかったようです。

    ・ミューリ
    ダンに毒を渡したかったのは、客観的に1番信頼できるということを伝えるためのフラグかと思います。
    映画的な展開ですが、ノーランさんの宇宙の話もその点では同じかなと。

    ・毒より爆殺
    結果的にほぼ大人のミューリが犬死なのは間違い無いですが、そもそものことの始まりの認識が異なっていたという点で考えると「あぁなるほどな…うん?」ってもう納得するしかないですね。
    未来のようにオープンな場所で巣を作ってる相手を根絶させるイメージでいたら、実は「遊星からの物体X」的な宇宙船に閉じこもって前から居ましたけど?って事が最初からわかってたら、核で吹っ飛ばせば良かったわけでして。

    以上は一応辻褄を合わせるために、それとなく劇中で説明されてますので、そこは分かってあげてもいいかなと思います。

    火山少年とか、PTSDから凄腕に数年で成り代わった親父さんとか、別次元のダンの展開など、余すところなくツッコミどころを用意してくれているのは確かですが。

    お邪魔しました。

    • ブログ主 より:

      ご意見ありがとうございます。
      アンプルについて説明ありましたか、気づきませんでした(^^; 確かにそれなら納得です。
      その他は認識の違いというか、物語として美しいかどうかの解釈なのかなーと思いました。

      ちなみに、冒頭サッカーシーンのブラジルの対戦相手は、カタールのKatara Studiosという映像会社が作った架空のチームのようです。
      https://www.iloveqatar.net/news/entertainment/fifa-world-cup-qatar-2022-chris-pratt-new-movie-the-tomorrow-war
      2022年W杯決勝の舞台というシーンであり、現実にカタールで開催されることの縁で制作に携わった、ということなのでしょうか。
      ブラジルは、ブラジルでないと決勝感が出ないから是非それで、ということなんですかね。

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