Kindle Unlimitedで、「マンガで読む名作 ソクラテスの弁明」を読んでみました。
文字による補足は一切なし、徹頭徹尾、絵と台詞のみで読ませる構成のため、
1時間程度で気楽に読めてしまいます。
しかし内容は濃密、ソクラテスの名言全集とも言うべきボリュームとなっています。
今回はこの書籍を、3つの重要なトピックスに絞って要約します。
(※以下に紹介する台詞は、そのままの引用ではなく、意に基づき編集しています。)
「知」とは何か
物語は、ソクラテスが裁判にかけられるところから始まります。
罪状はでっち上げ。ソクラテスに恨みをもつ者等の陰謀でした。
物語最初の見せ場としては、ソクラテスが恨みを買った背景について語られます。
ある日、デルポイに神託が降ります。
「万人のうちで最も賢いのはソクラテスである」
しかしこれに最も困惑したのはソクラテスでした。
何故ならソクラテスは、自身が何の知恵も持たない人間であると自覚していたからです。
ソクラテスは、自分より賢い人間が射ることを証明するために、
街に赴いては、賢者と言われる人間と禅問答を行います。
そしてその全員を論破し、賢者でないことを暴いていったのでした。
→これで自身の知恵を貶められた者が、ソクラテスを恨むようになったのです。
一方ソクラテスは、禅問答の経験値により、ある悟りを開きます。
これが、かの有名な「無知の知」という言葉が生まれた物語なのでした。
「善い生き方」とは何か
裁判員に媚びず不遜な態度を崩さなかったソクラテスは、
民衆までを敵に回してしまい、有罪判決、そして死刑を宣告されます。
そして幽閉され、死の時を待つ最中、友人は涙ながらに逃げることを勧めます。
しかし、ソクラテスはこう言い、逃げることを否定しました。
この「善い生き方」という言葉は、複数のシーンに渡って語られます。
先ほど述べた「裁判員に媚びず」「民衆までを敵に回し」には、
アテナの市民に「善く生きよ」と説いた結果、偉そうにと反感を買ってしまった、
という背景がありました。
また、死刑を告げられた際、ソクラテスはこう言っています。
私は別の書籍で、ソクラテスは「悪法もまた法なり」と呟きながら刑を受け容れた、
と読んだ覚えがあるのですが、前述の2つの言葉の様に、
「善」に焦点が当たると、全く違う印象になりますね。
「死」とは何か
物語の中で、ソクラテスは2度、死を受け容れた発言をします。
1度目は死刑を宣告される際、2度目は死刑になる直前の友との語らいの中でです。
哲学者、或いは詭弁家として、考えることを最も重要視していたのか、
肉体が滅んでも魂は生き続け思考を続ける、という思想が見て取れます。
そしてその後、彼は執行人によって運ばれてきた毒人参を飲み、
騒ぎも足掻きもせず、穏やかに死を迎えるのでした。
総評
マンガ版だからこその優位点として、大変分かり易く、読み易く、
かといってマンガ版だからと侮れない、大変濃密で感じ入るシーンの多い良作だと思います。
割愛せざるを得ない文字の量の都合か、台詞と話の繋がりが怪しいところもありましたが、
知、生、そして死について考えさせるというテーマにおいては、些末な点かと。
尤も、その3つはあくまで私の主観で選んだだけであって、
本書では他にも政治や教育など、様々なトピックスが名言と共に語られています。
読む方によって様々な感動があることでしょう。
大変面白く、勉強になりました。別のシリーズもあれば是非読んでみたいと思います。
コメント