「がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか」の要約と感想

書評
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井上 純一さんの「がんばってるのになぜ僕らは豊かになれないのか」を読みました。

前作・前々作も大変面白く、勉強になりましたが、
今作もためになる、是非とも世に知れ渡り、議論の的になってほしいものでした。

 

本の内容を要約し、感想を綴る事で、記憶と記録に残したいと思います。

 

なお、以下の内容を超短く・マイルドにまとめたものを、

amazonレビューにも投稿していたりします。

↓果たして、何件「役に立った」がついていることでしょうか。

本作の主旨要約

なぜ僕らは豊かになれないのか?
それは、国の経済政策の失敗のためです。

 

現在の日本には「弱い人を叩くほど経済は上手くいく」という風潮があり、
左右両方から貧しさを強いられている嫌いがあります。

 

トマス・ピケティの言う「左右」とは即ち、下記の2つの思想です。

 

バラモン左翼
→「貧困を受け容れよ」の精神のもと、所謂”リベラル”の活動を推進。
増税、公共事業削減を推進し、国民からお金を吸い上げる。
ビジネスエリート右翼
→「貧困は自己責任」の考えのもと、貧しさを当然のこととして押しつける。
非正規雇用拡大や緊縮財政の推進により、国民から仕事と所得を奪う。

 

こういった「大衆から乖離した一部エリートの運動」が政策となり国民に押しつけられることで、我々は豊かになれないのです。
世界中で同様の政治不信は発生していますが、特に日本では「将来に期待できない」人達が増え続けています。

 

経済は、民間と政府が支え合う事で回るものです。
政府には、政府にしかできない役割があり、それを全うすべきです。
その役割とは、物価の安定(2~4%の軽微なインフレ)です。

 

経済学者ケインズは、不景気を脱する方法を2つ挙げています。

①財政政策(政府がお金を使うこと)
②金融政策(政府が金利を管理すること)

お金とは「税金を払うためのクーポン券」であり、税金を払えば価値がなくなります。
政府がお金を使わないと、お金に価値が与えられないのです。
だからこそ政府は、スペンディング・ファースト、即ち、減税財政出動を積極的に行う事で、
民間の経済活動を促進させなければならないのです。

 

では、政府は何故そのような状態に手を打たず、お金を使いたがらない(増税したがる)のか。
それは、なんとなくです。
「なんとなく、プライマリーバランスを黒字化した方がよさそうじゃね?」
「なんとなく、国が借金するとかヤバそうじゃね?」
そのように経済学的根拠のない愚策を、過去にギリシャやアルゼンチンで実際に起きた失敗を省みることなく続けているのが、現在の政府なのです。

 

現在、コロナ禍によって経済は大損失を被っています。
経済活動を続けることによる「命の死」か、自粛による「経済の死」か、どちらかを選ばねばならない、などという人がいますが、
政府の役割は、「どちらからも国民を守ること」です。
感染症対策や店・企業への助成を大々的に行う事で、物価と流通を守らねばなりません。

今回、コロナ禍への対策として58兆もの国債を発行しています。
我々はその行く末をよく見るべきです。そして後に答え合わせをしてください。果たして、MMT反対派の言うハイパーインフレは起こったでしょうか?

政府は、ガンガンお金を使い、赤字になることで、国民を黒字にすべきなのです。

政府がこのような政策を改めないからこそ経済が回らず、結果、がんばってるのに僕らは豊かになれないのです。

 

本作を読んでの感想

この本の要旨は、「政府の役割」と、「それを果たしていない現状の糾弾」であると言えるでしょう。

 

それは、前々作「キミのお金はどこに消えるのか」、前作「キミのお金はどこに消えるのか 令和サバイバル編」でも一貫して主張されている「増税反対」「国を支えるのは物価安定と経済成長」という主張から更に一歩踏み込み、
「20年間デフレから脱却できず、日本を衰退させた政府の罪」「それを許す大衆の罪」を訴えるものだと思います。

 

政府を選挙で選出している我々は、「経済とか難しい事は、偉い学者さんとかが頑張ってくれればいい」という意識ではいけない、
経済についてもっと主体的に考え、政治に反映させるよう、声を上げなければいけない、
この本はそう言っているように思います。


 

このシリーズの素晴らしい点は、なんと言っても、「経済論」「増税問題」「市場原理」といった堅苦しくなんとも眠くなってしまう題材が、可愛らしい絵柄コミカルな描写で、楽しく・すっきりと読めてしまうことです。
そういった意味では、前述の「一般大衆に問題意識を芽生えさせる」ために、
漫画というツールは最適と言えるのではないかと思います。

「マンガでわかる こんなに危ない!?消費増税」もそうですが、主張が正しいかどうかは一旦さておき、
「今の日本の政治はこれでいいのか?」という意識を世の中に浸透させるために、是非これらの漫画も売れて欲しいなと思います。

 

1点だけ「それはまずいですよ・・・」という点を挙げるならば、
政府がプライマリーバランス黒字化を推し進める理由を「なんとなく」と断じていることです。

流石に、これは相手を貶める表現だと言わざるを得ません。そんなわけないでしょう。
いくら政府が馬鹿だからって、馬鹿にしすぎです。(ん?)

 

その他の部分にも散見される、反対派の意見を「何故か」とか「~としか思えない」という論説はどうかと思いますね。頁数の制限があることや、メッセージを単純化し主張を明確に伝えるために、などという事情点は分かるのですが、双方の主張を正しくぶつけてこその建設的な議論ではないかと思うのです。

 

本作が主張する考え方への私的見解

最後に、当作品が展開する経済の考え方について、私個人の意見というか感想も書き留めておこうと思います。

 

このシリーズの根幹となる主張を抜粋すると、下記のような点が挙げられるかと思います。

・いま政府がすべきことは、「増税」ではなく「減税」
・日本に必要なのは、「経済成長」と「物価の安定」
・プライマリーバランス黒字化は幻想。国の借金やハイパーインフレの懸念はあり得ない間違い
・政府の赤字は国民の黒字である。積極的に財政出動すべき
・他国の成功例・失敗例が、これらが正しい事を示している。赤字を怖れるな

 

これらの考え方のバックボーンとして、MMT(現代貨幣理論)があることは間違いないでしょう。
(作中では「MMTではなく、『経済学の常識』」とされていますが)

 

・自国通貨建てで国債を発行する限り、自国の現金で国債償還が可能。よって、インフレにならない限り、財政赤字には問題が無い
・インフレになったら、税金(主に消費税)を増やすことで、市場から金を回収すれば良い

というMMTの主格たる理論が、前作・前々作から、今作でも主張されているためです。

 

私も基本的には、この論旨に賛成です。
消費税減税市場の活発化ITと教育への投資。それを進めてくれる政党に投票したいと思っています。(残念ながらそんな党はないのですが)

 

一方、2020年に財務省がこれを「まともな理論だとは思っていない」と見解したことが話題になりました。

 

「MMT」に対する財務省のあきれた見解 - 高井崇志(タカイタカシ) | 選挙ドットコム
国民民主党「政調第1・第2合同部会」にて財務省の角田主計局次長から来年度予算案についてヒアリング

 

衆議院議員中谷一馬君提出MMT(現代貨幣理論)に関する質問に対する答弁書

 

ではMMT反対派は、何が気にくわなくて反対しているのでしょうか?
「MMT 問題点」でググった結果をざっと見る限り、下記の2点が懸念材料になっているように思います。

 

(1)市場は複雑なマインドの絡み合いであり、理論通りに動くとは限らない。
例えば国債を刷ったからと言って、それを国民が貯め込んでしまっては意味が無い。
インフレが発生しないのなら、公費を投じた分は唯々負債となって国民にのしかかることになり、国はより貧しくなってしまう。
(2)MMT派は「インフレになったら、税金(主に消費税)を増やすことで市場から金を回収すれば良い」と言うが、
政府に、いざその時に国民に増税を納得させられるだけの力があるだろうか?
消費減税支持派は低所得層が中心となるだろうが、いざインフレになったとき、自分達の支持母体である低所得層の意向に全く相反する、増税という政策を実行できるのか?
寧ろ、支持を得たいが為に国債を濫発し続け、高度のインフレを推進してしまうのではないか?

 

2021年3月時点の私の見解です。

(1)は根拠に乏しいというか、では他国のMMT導入実績をどう受け止めているのか?という気持ちになります。
また、所謂「腐るお金」、即ちチャンバーといった用途と使用期限を限定する給付などによって代替出来る問題ではないかなという思いもあります。

そもそも、理論通りにいく事なんてほとんどないわけで、改善策を打たない理由にならないと思っています。

 

一方で、(2)の方は、確かに実際に起こりそうな問題だなと感じます。
無能な政府(財務省)に無理矢理理論を実践させたところで、それを使いこなせないのでは意味がありません

ということは、問題の本質について、本作では「政策にある」という主張でしたが、
そもそも利権や支持母体への忖度により「正しい政策をとれない政治の仕組みそれ自体」が問題なのではないか。
というのが私の意見です。

 

終わりに

ということで、経済漫画シリーズの要約・感想と私の意見でした。

 

「正しい政策をとれない仕組み自体が問題」と言いましたが、
一番ダメなのは、政府が無能であることに声を上げない、立ち上がってくれている人達を後押ししない、我々大衆だと思います。

 

ので、こういった経済漫画は是非どんどん認知されて欲しいなと思います。

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