THE SECOND、マシンガンズが敗れギャロップが勝ったことに象徴される大会性

お笑い評
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今年(2023年)から始まった、結成16年以上にしてブレイクしきれていない芸人のための漫才トーナメント、「THE SECOND」

THE SECOND~漫才トーナメント~ - フジテレビ
THE SECOND~漫才トーナメント~ - オフィシャルサイト。実力派漫才師にセカンドチャンス!!結成16年以上のコンビがタイマンで競う、新たなお笑い賞レース開幕!決勝戦は2023年5月、司会に東野幸治を迎えて完全生放送!

悪く受け取れば出涸らしとも受け取れてしまう参加基準ですが、そこはお笑い業界全体の層の厚さ、つまりは「売れてない芸人にも面白い奴等はいっぱいいる」という自信の現れ、ということなのでしょう。実際、ファイナルに勝ち残った芸人さんらはいずれも無冠の帝王的な、賞レース未受賞者ばかりですが、私も相当好きな部類の方々がたくさんいました。
まぁ、金属バットやスピードワゴン、三四郎、テンダラーあたりは既に十二分に売れっ子なわけで、セカンドチャンスとか必要か?と思わなくもありませんでしたが。

初回開催と言う事で、そのコンセプトやシステム、開催設計など、全てが手探りの状態から形にされたもので、正直完璧とはいえないものではあったと思います。しかし、それも含めて非常に興味深く、そして何よりとても楽しいエンターテイメントだったと思います。

というわけで、今回はネタ内容もさることながら、大会趣旨についても感想を書いてみたいと思います。

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ファイナル8組

第1試合

金属バット

金属バット プロフィール|吉本興業株式会社
吉本興業に所属している金属バットのプロフィールをご紹介いたします。

金属バット / ことわざの意味

1点 2点 3点 [合計点]
2人 27人 71人 269
個人的点数 三段階 絶対評価点
3点 85
[概要]ことわざの意味を教える。

[感想] ○たっぷりゆったりと尺を使った、余裕のある導入
○同じテーマが続くが、尺から切り口まで多彩
○ツッコミのワードでも笑いを取り、笑いが途切れない
○「早口言葉」と言い間違えたときのリカバリが秀逸。台本通りかと思える自然さ
×「ICOCAを腕に入れるってこと?」の件、意味が繋がってなくて「?」となってしまう
○仏三連発と、台本もしっかり作り込まれている
○オトし方が独特だがしっかりオチてる

[総評] ダラダラと天然でやっているようでいて、実は相当しっかり作り込まれている。ベテランの貫禄漂う、卓越した芸の域だと言えよう。素晴らしい。
特に、友康が途中で「ことわざ」を「早口言葉」と言い間違えてしまったくだりのリカバリはお見事だった。会話が止まることなく、直前のキラーフレーズを引用しつつ笑いに繋げるという、地に足がついていなければ決して出来ない余裕を感じた。そんな余裕のある人が間違えるか?実はそれも台本だったのでは?と思えるほどだった。
これほどの実力がありながらM-1では決勝の陽の目を見れなかったわけだが、ところ変わってこの大会では、6分という尺を持て余す事無く使い切り、M-1ではなかなか見られない泰然とした空気をつくり実力を見せつけた。正にTHE SECONDが見せたかった芸人の凄さを体現していたのではないかと思う。勝ち残れなかったのは、観客がまだ空気を掴み切れていない一組目だったことで、印象がふわふわとしてしまったためではないか。不運だったとしか思えない。それも含めて金属バットらしいといえばらしいな。

マシンガンズ

マシンガンズ | 太田プロダクション
マシンガンズのプロフィール

マシンガンズ / 営業であった嫌な事

1点 2点 3点 [合計点]
1人 27人 72人 271
個人的点数 三段階 絶対評価点
1点 68
[概要]教習所の営業などであった嫌な事について捲し立てる。

[感想] ○積極的なメタネタ、客いじり、出演者いじり
×肝心のネタにおいて、フリからボケまでの間が長すぎる
△2人で言葉や仕草を合わせる、良くも悪くも分かりやすすぎる芸風
×自分たちの体験を語る中、唐突にX JAPANいじり。ブレて見えてしまう
×テンポがブレる。噛んだり、一瞬言葉が止まったり。
×オチらしいオチなし。

[総評] 従来までの賞レースではあまり許容されない、メタ、客いじり、出演者いじりを最も積極的に行った組ではないかと思う。これは悪い事では無く、劇場型芸人腕に脚光を当てる番組主旨からすれば寧ろ正解なのだろうと思う。クレバーな立ち回りだなと思った。
一方、十数年前からずっと進化のない芸風なのは物足りなさを感じてしまった。味が出てくるわけでもなく、寧ろ昔の方がテンポが早く勢いがあったようにすら思えてしまう。「二人で台詞を合わせる」「ボケで特定の所作をする」というテクニックは、わかりやすすぎるが故に素人臭さを感じてしまう。というのも、客としては「ここで笑って欲しいのね」ということが分かるのでウケやすいのだが、それは自転車で言うと補助輪をつけているようなものだと思うのだ。「エンタの神様」的な芸風というか、対象年齢が低いというか、普段あまりお笑いを見ない人向けの芸風であり、THE SECONDというこれまでの賞レースでは見せづらい技術・風格を発揮する場という主旨とは真逆のスタイルなのではないかと感じてしまった。

第2試合

スピードワゴン

ホリプロコム オフィシャルホームページ
ホリプログループの芸能事務所。俳優、タレント及び歌手等の養成並びにマネージメントを行う芸能事務所

スピードワゴン / 四季折々の恋

1点 2点 3点 [合計点]
1人 41人 58人 257
個人的点数 三段階 絶対評価点
1点 65
[概要]バーから始まる、小沢さんによる恋愛ドラマ。

[感想] △彼らのツカミパターンを知っていることを前提にした変則的な導入
×この年齢で恋をテーマにすることに共感できない
×ところどころ挟んでくる甘い台詞のパンチがいまいち
×ひとつ一つのボケに脈絡がない
○ハブられてた井戸田がドラマに入ってくる展開
×既にENGEIグランドスラムなどで全国放送済みのネタほぼそのまま

[総評] 導入の井戸田をハブる芸風もそうだが、あまーい言葉、井戸田の結婚歴ネタ、ハンバーグ師匠など、彼らをよく知る人にとっては見所が多い、ベスト盤的なよいネタだとは思う。しかし、一方でそれを知らない人にはよく伝わらない中途半端な差し込み方だったのはいただけなかった。THE SECONDが求める実力って、知名度に寄りかかる事ではないと思う。また、では逆に彼らをよく知る人にとってみれば、既に過去に全国放送で演じた事のあるネタをほぼそのままやるという、こちらも新鮮味が無く物足りない感じだった。彼らの敗因は、コアなファン・初見さんのどちらにも向かい合わなかったことに尽きると思う。個人的には、昔オンバトなどでやっていたロック精神溢れるネタを、今の洗練された実力でアレンジしてくれたものが見たかったな。

三四郎

マセキ芸能社所属タレント
三四郎

三四郎 / 占い師

1点 2点 3点 [合計点]
4人 14人 82人 278
個人的点数 三段階 絶対評価点
2点 75
[概要]占い師が三四郎の未来を予知する。

[感想] ○徹底したコアな他の芸人ネタ
○王道的で見やすいネタ進行
○キングオブコメディ・・・笑
○ウエストランドの「警察に捕まり始めている」のアレンジ

[総評] マシンガンズがMCや客を最もいじった組であったとしたら、三四郎は最も「芸人」そのものをネタにした組であったと言えよう。コアな芸人ファン以外には全く伝わらない可能性もある、負けたら作戦ミスだがこれで勝ったのだから、実にクレバーだったと言わざるを得ない。予選から同様のニッチなところを拾いに行くスタイルだったようなので、完全に確信版なのだろう。
しかし芸人いじりの中でも、知名度によってジャブと決めのストレートを使い分けているあたりは上手いなと感じた。例えば知名度低めと思われる東京カウボーイやダウ90000は小ボケ扱いで手前でさらっと、キングオブコメディやウエストランドといった一般にも認知されているであろうところはオチに持ってくるというあたりに、計算された強かさを感じる。
ウエストランドに関しては、引用の仕方もエスプリが効いていてとても良かった。元ネタの方では「芸人から見たYouTuberを揶揄する言葉」として警察に捕まり始めていることを言っていたものを、「既に警察に捕まった芸人に向けた言葉」に置き換えたところに、一概にパクりと憎めないセンスの良さを見たように思う。
ただし気になったのは、昔THE MANZAIに出てた頃とあまり技術的な進化がないような気がしたこと。良くも悪くも昔のままだった気がする。しっかり並べて見たらそうでもないのだろうか??

第3試合

ギャロップ

ギャロップ プロフィール|吉本興業株式会社
吉本興業に所属しているギャロップのプロフィールをご紹介いたします。

ギャロップ / カツラを作る

1点 2点 3点 [合計点]
0人 23人 77人 277
個人的点数 三段階 絶対評価点
2点 69
[概要]髪が生えたように見えるように、カツラを100個作ったらどうか。

[感想] ○関西の正統派しゃべくり漫才
○一本のテーマで6分をやり通すのは凄い
×やってることが、ブラックマヨネーズの芸風そのまま
×笑いどころが林(左)に偏りすぎ。バランスが悪い

[総評] このネタのいいところは、しゃべくりの達者という点をおいて他にはない。軽快なテンポ、目に見える髪いじりから想像を広げていける話術の巧みさ。漫才とはかく在るべきと言うようなド王道のスタイルを演じきれるのは、確かな実力が成せる術だと思う。
一方、やってることがブラックマヨネーズの芸風そのままであることが気になって仕方が無かった。外見いじりから始まり、「ではこうしたらどうか」「それだとこうなるだろ」「ほなこうしろ」「おかしいだろ」「じゃあやるな」「お前が言い始めたんだろ」の流れは、本当にそのまま。2005年のM-1をベースにしたとしか思えなかったし、パクリと言われても仕方ないのでは?(こういうネタはどれもこういう形に収束するものなのかもしれないが)

テンダラー

テンダラー プロフィール|吉本興業株式会社
吉本興業に所属しているテンダラーのプロフィールをご紹介いたします。

テンダラー / 出会い

1点 2点 3点 [合計点]
1人 26人 73人 272
個人的点数 三段階 絶対評価点
3点 83
[概要]出会い、飲み会、駅伝といったショートネタ集。

[感想] ○浜本(右)の動作が凄い。もはやオリジナリティすら感じる。これぞ演芸。
○耳でも目でも笑える
×今ジャニーズをネタにされると身構えてしまう笑。しかもその件には触れないんかーい
×後半のネタが汚い。演技が上手いから余計に汚い
×ショートネタを繋いだ感じ。後からなんのネタだったかが思い出せない

[総評] 明らかに、この日一番「演技が上手い」組(というか浜本)だった。松本人志も驚嘆のコメントをしていたが、この演技は凄い。機敏で大ぶり、何をしているかが分かりやすいので、テレビか劇場か、大人か子どもかを問わず、見ているだけで面白いと感じられる。コミカルな演技の教科書になりそうなほどだ。これほどの演技力があればネタを作るのは容易であろうし、つまりは何本でもできる=何分でもできるのであろう。正に劇場において最強の芸人なのではないだろうか。
その分というか、ネタの構成はだいぶ甘い。一貫したものが無いし、下ネタも多い。20年前からアップデートされていないように思う。劇場ならそれでもいいのだろうが、これはあくまで全国放送。点数に繋がらなかったことは、現代の感性を持つ若者にハマらなかったことの現れだったのではないだろうか。

第4試合

超新塾

超新塾|ワタナベエンターテインメント
ワタナベエンターテインメント

超新塾 / 社長を盛り上げたい・映画の予告をやりたい

1点 2点 3点 [合計点]
1人 43人 56人 255
個人的点数 三段階 絶対評価点
3点 80
[概要]社長がお酒を飲むところを盛り上げる。英語を使ったかっこいい映画の予告。

[感想] ○ツカミでイリュージョン(宴会ネタ)笑
×舞台上が賑やかなので、観客の笑いが追いつかないと滑った感が如実に出る
×老舗の女将のくだりはなんだったんだ??
○アイクぬわらを使いこなす事でオリジナリティが生まれている
○ハイテンションを維持して最後まで駆け抜けた

[総評] 良い意味で安定感がある。声がはきはきとしていて賑やか、ネタもお茶の間に流せる平和な内容で、笑いどころも分かりやすい。グローバルな感じではあるが、その内容は小中学生レベルで充分に理解できる。語弊を怖れずに言えば「子ども向け」のネタだと言えよう。子どもに受ける芸人は強い。彼らはまだこれからスターになる可能性を充分に持っている。
一方、6分という時間をショートネタ2本で埋めたこと、前述の「子ども向け」に反した飲み会ネタをしてしまったことは、彼らの持ち味を潰してしまう勿体ない選択だったように思う。

囲碁将棋

囲碁将棋 プロフィール|吉本興業株式会社
吉本興業に所属している囲碁将棋のプロフィールをご紹介いたします。

囲碁将棋 / 生意気なものまねタイトル

1点 2点 3点 [合計点]
2人 20人 78人 276
個人的点数 三段階 絶対評価点
2点 75
[概要]素人のくせにものまねタイトルが生意気。

[感想] ×前半は実際にものまねをしないので、とてもモヤモヤする
○自然なダブルボケの切り替え。二人とも笑いをとれている
×「孫正義が一番野沢雅子」ってどういうこと??
○前半と後半で見せ方をガラリと変えた、飽きさせない構成

[総評] 実力があることは火を見るより明らか。テンポも発声量・滑舌も申し分なし。ボケ時とツッコミ時のテンションの違いも笑える。高度な技術を要する現代風漫才を完璧にこなしきっていたと言えるだろう。
唯一、心底納得がいかなかったのが、めちゃくちゃ面白そうなものまねテーマを出しておきながら、それを実際にはせず、言いっ放しになっていたこと。会話としても実演させないのは不自然であり、演ることを前提としないご都合主義を感じてしまい、とてもモヤモヤしてしまった。後半では演るのだが、似ない事を前提にした投げやりなもので、これもピンとこなかった。
ひとえに、話の振り方を間違えたのではないだろうか。「ものまねをやります」から入るのでは無く、例えば「過去に見たことのある印象的なものまね」とかの話であれば、実際にはそれを演じなくても違和感が無かったかも知れない。勝ったので結果オーライではあったのだろうが、正直勿体なかったと思う。

準決勝 第1試合

マシンガンズ

マシンガンズ | 太田プロダクション
マシンガンズのプロフィール

マシンガンズ / 営業であったひどい話

1点 2点 3点 [合計点]
1人 14人 85人 284
個人的点数 三段階 絶対評価点
2点 70
[概要]文化祭やYahoo知恵袋であったひどい話などについて捲し立てる。

[感想] ×導入がチグハグ。「みんなお笑い好きだよね」がどこにも繋がらなかった
○エゴサーチというリアルタイム性を取り入れた即興ネタ
×昔からやってる変わらないネタ
×微妙に滑舌・呂律が回ってない

[総評] 6分ネタを2本ということは、量的にはM-1で言ったら3本やったのと同じくらいだ。それは疲れるだろうし、滑舌・呂律が怪しくなるのは無理もない事なのかも知れない。
それにしても、即興ネタと何年も前からやってるお馴染みのネタの組み合わせは・・・MCでネタがない的なことを冗談めかして言っていたが、案外本心だったのかもしれない。
この2本目の時点で、体力的にもネタ的にも、彼らの全てを出し切ったような感があった。

三四郎

マセキ芸能社所属タレント
三四郎

三四郎 / 師匠に弟子入り

1点 2点 3点 [合計点]
3人 38人 59人 256
個人的点数 三段階 絶対評価点
2点 72
[概要] 三四郎の小宮さんに弟子入りする。

[感想] ○くら寿司の時事ネタで導入
○ファンファンファンファーンが古くさいと思ったが、それがフリになっているとは。
○「三四郎は小宮から入るんだよ」と天丼をしながら、ちゃんと画が変わるように考えられてる
○ツッコミワードが強い。
×後半のTHE SECONDネタに入るときの転換時に笑いが止まってしまった

[総評] 安定感があるところが流石だなと思いつつ、よくよく考えるとやってることは1本目とあまり変わってない事に気づく。即ち、王道的なストーリーコントをベースにした芸人いじりだ。それが2本目でも変わらず面白いと思えるのだから、レパートリーが広く見せ方が上手いなと思う。
ただし、爆発力というか、瞬間最大風速が出たかという点では、1本目より落ち着いてしまっていた気がする。それは観客側が「慣れ」てしまったからではないか。気になるほどではないのだが、「なんか同じ事してんな」という気持ちがどこかで生まれていたのではないかと思う。まぁそれはマシンガンズも同じなわけで、点数に反映されるほどでもなかったのかもしれないが。

準決勝 第2試合

囲碁将棋

囲碁将棋 プロフィール|吉本興業株式会社
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囲碁将棋 / 生意気な店

1点 2点 3点 [合計点]
0人 16人 84人 284
個人的点数 三段階 絶対評価点
3点 85
[概要]初心者のくせに店のコンセプトが生意気

[感想] ○「10年早いと言われると思ったから、10年前から温めてた」笑
○開けてみたら1本目とコンセプトに共通性があった
○1つ1つのボケを羅列するのでは無く、しっかり掘り下げている
○ボケとツッコミの入れ替わりの感覚が長すぎず短すぎず
○生意気なことへの着眼点が素晴らしい。「学校指定の制服屋」が出せる発想力

[総評] 個人的には、この日一番面白かった1本目をフリに出来ているところから感嘆したし、平坦にならず飽きさせない構成力も素晴らしい。何より、1本目で感じたモヤモヤ感がなかったので純粋にネタと演技を受け止めることができた。これが彼らの真価か。
こういったネタを作ろうと思ったとき、アイデアの羅列になってしまうことは少なくない。極端に言えばハライチの岩井のように1つ言ってはツッコむ、を繰り返すような感じだ。だがこのネタはそのアイデアに対しての鋭いツッコミワード、そこで働く人物やその店に来る客などに対して掘り下げて話を膨らませているので、とても濃密で充実感がある。とてもよい出来だった。これで破れてしまったのは本当に偶々、不運だったと言う以外に思いつかない。

ギャロップ

ギャロップ プロフィール|吉本興業株式会社
吉本興業に所属しているギャロップのプロフィールをご紹介いたします。

ギャロップ / 電車

1点 2点 3点 [合計点]
2人 12人 86人 284
個人的点数 三段階 絶対評価点
2点 72
[概要]電車に乗ったときのあるある。

[感想] ×もはや毛利(右)に喋らせてない・・・台詞が被って聞き取れないところがしばしば。
○「普段やってる人のボリュームじゃない」というメタ的なツッコミ
×最後何言ってるのか聞き取れなかった。「タクシーもやんのかい」??

[総評] 外見いじりに終始した1本目とは一転して、電車という日常のあるあるをネタにするという、良く言えば振り幅の広さを見せたネタだったと思う。一方で、この日の3本のネタを思い起こしたとき、この電車ネタは圧倒的に印象が薄い。おそらく、彼らの個性や思想が反映されておらず、誰もが感じる「あるある」を述べるに留まったからではないかと思う。良く言えば万人受けしたが悪く言えば個性がなく無難なネタだった。
準決勝の内3組が284点で並ぶという大接戦となり、ギャロップは3点の数の多さで勝ち抜けとなった。個人的には圧倒的に囲碁将棋だったが・・・審査基準に助けられたんじゃないかなぁと思ってしまう。どちらにも3点をつけた審査員に、その内容の差を聞いてみたいなぁ。

決勝戦

マシンガンズ

マシンガンズ | 太田プロダクション
マシンガンズのプロフィール

マシンガンズ / この大会に勝ったら

1点 2点 3点 [合計点]
5人 44人 51人 246
個人的点数 三段階 絶対評価点
2点 69
[概要]この大会に勝ったて道で声をかけられたらと捲し立てる。

[感想] ○導入に、分厚い大会いじり
×その後はまた昔ながらの見た事のあるネタに
×言ってることがふわふわしてるしワードチョイスもだいぶ不安定
△1本目と比べるとネタモードの集中力がなく、素に近い状態でやってる感じ
○積極的な客席いじり
×後半は時間を埋めるために無理矢理つないだ感

[総評] 完全にスタミナ切れ・・・。自分たちで言っていたが、本当に言ってることがふわふわしていてキレがないし、同じワードを重複して使ってしまったり、言い換えになっていないこともしばしば。ネタには構成も無く、最後は時間を埋めるためか無理矢理既存のネタを押し込んだような展開に。見ていてタオルを投げてあげたくなる状態だった。
この大会主旨を最も色濃く反映したルールが「6分ネタ×3本」だったと思う。予選の長丁場を勝ち抜いたうえで更に計18分ものネタを披露しなければならないのは並大抵の事では無い。ネタ切れして当然、途中で体力が尽きて当然なのである。それを耐えきれるだけのネタの物量・精神力(集中力)をもったヤベー芸人が勝つように設計された大会だったと思う。マシンガンズは、このルールに振り落とされたのだと思う。彼らの芸風は2本が限界だった。長距離ではなく短距離のランナーだったということだろう。それでいて日本でただ2組完走したのだから、その点に心から拍手を送りたい。

ギャロップ

ギャロップ プロフィール|吉本興業株式会社
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ギャロップ / 高級なフレンチ

1点 2点 3点 [合計点]
1人 22人 77人 276
個人的点数 三段階 絶対評価点
2点 70
[概要]庶民はフレンチの良さが分からない、パンが一番美味しい。

[感想] ○「パンーーー!?」というキラーフレーズ、その一点突破のみに全力投球した尖った構成
×心臓部分ではあるのだが、それでもいくらなんでも、笑いの無いドラマパートが長すぎ・・・
×毛利(右)の発声が弱すぎて、何を言ってるのか聞き取れない

[総評] ドラマパートが長すぎることがフリになっているとはいえ、その間笑いらしい笑いも無く、どうしてしまったのかと思いきや、最後の最後に誰もの発想を超える、渾身の右ストレートが繰り出された様な感覚だった。
正に一点突破、近年稀に見る尖りまくったネタだった。前半の「パン!?」から実に4分を超えるドラマパートを経て帰ってきた渾身の「パンーーー!?」というキラーフレーズ。間違いなくこの日最大のインパクトだったし、他のどの賞レースでもこんなネタは見れないだろう。イリュージョンが成功したときのように芸術的で、狙い澄ました漫才師冥利に尽きる会心の一撃だった。
マシンガンズのときに見て取れたが、4時間という長丁場の舞台に、観客も疲れてきていた。今思えば、「細かいボケを数多く」というM-1やレッドカーペットで持て囃されたスタイルよりも、油断しきった状態に大ボケを入れるこの作戦は大正解だったと言えるだろう。それを、1本目・2本目とコンセプトを被らせることなく、3本目に不意打ち的に持ってきた彼らの慧眼には、ネタ1つ1つを点数づけするだけでは表現できない芸術性があった。
正にこの大会でしかできない、唯一無二の挑戦的なネタだったと言えよう。

総評

最終的な、審査員(と私)の点数のまとめは下記の通り。
(赤はこの日を通じての最高点、青は同最低点。)

No. 演者/演目 1点 2点 3点 [合計] 私(三) 私(絶対)
1-1 金属バット / ことわざの意味 2 27 71 269 3 85
1-2 マシンガンズ / 営業であった嫌な事 1 27 72 271 1 68
2-1 スピードワゴン / 四季折々の恋 1 41 58 257 1 65
2-2 三四郎 / 占い師 4 14 82 278 2 75
3-1 ギャロップ / カツラを作る 0 23 77 277 2 69
3-2 テンダラー / 出会い 1 26 73 272 3 83
4-1 超新塾 / 社長を盛り上げたい・映画の予告 1 43 56 255 3 80
4-2 囲碁将棋 / 生意気なものまねタイトル 2 20 78 276 2 75
準1-1 マシンガンズ / 営業であったひどい話 1 14 85 284 2 70
準1-2 三四郎 / 師匠に弟子入り 3 38 59 256 2 72
準2-1 囲碁将棋 / 生意気な店 0 16 84 284 3 85
準2-2 ギャロップ / 電車 2 12 86 284 2 72
決1 マシンガンズ / この大会に勝ったら 5 44 51 246 2 69
決2 ギャロップ / 高級なフレンチ 1 22 77 276 2 70

自分で点数を付けてみて思ったのは、三段階で採点するのは意外に難しいということ。どこからを3点としてどこからを2点とするのか、自分の中の基準で採点するべきか、或いは2組を比べたときに優劣をつけることを考慮するべきか。最初の方は測りかねてブレた採点になってしまった感があるし、後半は2点ばかりつけることになってしまい面白みがなかった。実際会場で採点する人もそんな戸惑いがあったのであろうから、結果に対してやいのやいの言わないようにしたい。

さて、この大会は言わば「シニア向けM-1」とでもいう位置づけにありながら、コンセプトからしっかり差別化を図ろうとしたのであろう、明らかにM-1を意識した独自ルールが多々見受けられた。

・賞レースでの優勝経験のない、「芸歴16年以上」のプロのみが参加可能

→M-1出場者との重複を排除

・漫才のみ可
→KOCやR-1との区別。
・ネタ時間が6分(※必ず5分以上。6分半を超えたら減点)、最大3本披露

→より芸人としての底力が問われるように。

・トーナメント形式
→出順の有利不利が緩和。
・観客による三段階採点形式

→統計を重視

当然、これによって戦い方は大きく変わったことだろう。特に2000年代にはシステム漫才こそが「M-1の攻略法」のように扱われたものだが、このTHE SECONDではそれが必ずしも有利になるとは限るまい。決勝におけるマシンガンズが破れ、寧ろ3本ともスタイルを変えたギャロップが優勝した事は、正にこの大会のデザイン通りの結果だったと言えるだろう。

更に言えば、トーナメント方式が採用された事で、運要素がとても強くなった。何しろ極論、相手組が弱ければ上がっていけるのだ。逆にいえば、どんなにいいパフォーマンスをしても、優勝レベルの強者と当たってしまえば早々に敗退することになる。勿論、M-1においても出順という運要素はあったが、それに比べてももはや実力を測るとかではなく、「勝ち上がれたらラッキー」というお祭り要素の多い形式だと思う。優勝したギャロップは、最強の芸人と言うよりも、「福男」的な位置づけと思うとしっくりくる。なのでこの大会においては、誰が勝ったか負けたかについて論争することはあまり本質的ではないのかもしれない。

そんな中、本文中にも書いたが、やはりギャロップの3本目はとても象徴的だったと思う。ネタ単体で見れば、笑いどころも少なく技術的にも上には上がいた、高評価を得られるほどのネタではなかったように思う。しかし、この日、この大会で、観客も疲労を感じてきている時間帯、1・2本目があったうえでのこの3本目、という極めて限定的な条件つきで、これほどこの瞬間に相応しいものはなないと思えるほどにハマったネタだったこの大会そのものを体現した、記録にも記憶にも残る素晴らしい締めくくりだったと思う。

個人的には、もっと芸人の底力をためすようにルールを強めてもよかったかなと思う。例えばネタ時間は必ず6分~6分半に収めなければならない、とか。参加者による採点に加えて、笑い声の大きさも加点対象に加える、とか。賞レースというよりはお祭り的な位置づけの企画として、M-1で出来ていない事を積極的に取り込んでいって欲しいなと思う。

 

余談になるが、この日の瞬間最大風速は、松本人志のマシンガンズはいつかM-1で会えると思っていたので・・・あっ、マシンガンズじゃないわごめん、金属バットだ」のくだりだったと思う。MCでの盛り上がりは大会全体の盛り上がりに直結したと思う。やはりレジェンドは偉大だなと感じた。

終わりに

というわけで、THE SECONDの審査員ごっこ(感想)でした。

実は、この大会で応援していた芸人さんは軒並みトーナメント初戦で敗退してしまいました(T-T)。お笑いに限らず、どうも私の感覚は、多数決で負けるんですよね・・・
けど、これほどネタが長く見れる大会はあまりないので、とても楽しんで見れました。次はKOCでどのように雰囲気が変わるのか、という視点もできたので、そちらも楽しみにしたいと思います。

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