毎年恒例、キングオブコント2021を観ました。
同年6月放送の「キングオブコントの会」に歴代王者・エースが集結し、超ハイレベルなコントが披露され好調な視聴率を叩き出したばかりという、[番組的にもプレッシャーを背負っての開催となりました。
また、
といった点でも、注目度の高い大会だったのではないかと思います。
予備知識なしで決勝だけを観たかったので、準決勝までの予選は一切見ずに挑みました。(直前番組の「お笑いの日」は見ましたが。)
今年も一視聴者として審査員ごっこ彡☆`_ゝ´△して楽しみましたので、メモを残したいと思います。
あくまで個人の感想ですので、悪しからずご了承ください。
見逃し配信↓
決勝10組
蛙亭
○ド頭の緑の液体 → 客席悲鳴。この時点で爪痕残してる。出だしの掴みよし。
×だが悪く言えば出オチではあった。
○パントマイムと効果音で、映画のあるあるシーンを再現するという技量が凄い。
×オチで愛着がわいてきた事を笑いにしたいのなら、途中はもっと突き放しても良かったのでは。
○序盤の「ちょっとかわいい」に誰も共感していない笑。良くも悪くも、会場の反応が面白かった。
→一番手としては最高の要員だったのでは。
×もっと色々展開できそうなネタだっただけに、着地がコンパクトに見えた。
○いい話で後味良く終わったのは好感。世の中のこれまでのお笑い的には、キモがり抜いて惨めな姿を笑う、というのが主流だったと思うが、「誰も傷つけない笑い」の今の時代らしさなのだろうか。
・発想は突飛だが演技のテクが追いついていないという点で、後の組と比較しやすい、非常に分かりやすい試金石になったのでは。
ジェラードン
・唯一のトリオ
・序盤のキツい展開がハマるかどうかは大きな分かれ目だったと思う。
→会場が沸いたのは良かったが、時と場合によっては全編にわたってスベりそう。
○途中途中のご尤もなツッコミ「見た目体育教師じゃん」「髪型逆じゃない?」
○女形の角刈りの裏声がそれっぽいのは草。
×捻りや展開がなく、キツい学生の描写だけで終わってしまった。全世代向けのコンセプトというなら仕方がないが、個人的にはどうにも物足りなかった感が。
×「シュウジしか勝たん」など今風のワードを使う割に、曲はCan you Celebrateだったり、弱冠、対象世代がチグハグな感。「小学生でも笑える」を目指すなら、特定世代に向けた言葉や演出は極力控えた方が良いのでは?
男性ブランコ
・全く見た事のないコンビで、ダークホースなるかというニュートラルな視点で見れた。
○「ボトルメールはバクッチングアプリ」と言うパワーワード笑
○ロマンティックなオープニングから、相手が関西弁というベタな展開、だが相手はそれが好みだったという、意表を突く二重構造
○かと思いきや、語り部の妄想だったという更なる展開 → 実際に会ってみたら、妄想の通りの女性で歓喜するという、後半にかけて怒濤の展開。
○松本「凄いテクニックを使っている。前半と同じことを後半にやって裏切っていく」←正にこれ。
○爽やかで誰も傷つかないオチ。
○そのくせ個性や愛嬌は感じられ、微笑ましいつくりだった。
×一方、毒がなさすぎて、爪痕が残らなかった感はある。
○前2組をテクニックで圧倒的に上回っていた。決勝進出は納得。
うるとらブギーズ
○前半はよくある「奇抜な親子」といったネタだが、後半はアナウンサーが笑ってしまうことを笑いにする、という新しい展開をみせる
○「髪型がモーガンフリーマン」「ズボンにBC(ビシ)のアップリケ」などの印象的なフレーズ
○「含み笑いで放送する」というのはなかなか演技力が要りそう。
×「テイビシ」という名前で笑いを取りに来ているのがよく分からなかった・・・これ面白いのか?何か元ネタとかあるのか??
×笑いのスケールが小さい。このメンツの大会ではもはや、ぶっ飛んだ発想や一線を画する状況設定がないと、なかなかインパクトが出ないと思う
ニッポンの社長
・唯一の大坂勢らしい。東西の比率がM-1と対照的なのが実に興味深い。
×掴みが遅すぎる。
○効果音をリズミカルに使い、それに合わせた卓越したパントマイムで魅せる。
○バッティングセンターなのに打てない、というなかなかない斬新なシチュエーション。
×ボールを頭で受けるマイムはさすがに痛々しくて笑えない・・・客席も明らかに引いてたと思う。
○隣の打席に移ってもボールを受け、舞台を大きく使っていた。
△オチ:口出してきたオッサンがバッティング超上手い・・・だからなんなの?笑
〇小峠「ボケ台詞を言ってないのに笑いを取れている」
×昨年の「ケンタウロス」のインパクトが強すぎて、彼らにしては小振りなネタだったなーという感想。バッティングセンターだけに。
○同じネタを他の芸人がやっても決勝までは来れないであろうことを思えば、演技力という武器を活かした彼らにしか出来ないネタだったと言える。
そいつどいつ
○ホラー映画あるあるを詰め込んだ展開。
○ウザい彼女感も出してきていて、二つの線で笑いをとりにきている。
○光る顔面パック、縦横無尽に宙を駆ける顔面パック笑
○目を離すと追い切れないような、細かい仕草による表現が目立った。たしかに演技派だ。
○途中の暗転(停電)で流れを変え、クライマックスへ。やっぱり驚き≒笑い、だなと。
△↑からのオチ:ドッキリでした、という平和的な終わり方。
○コントと舞台の中間、より広い意味でエンターテイメントであり、お笑いとしては新機軸的な芸風だと思う。
×ただ、「笑わせたい」より「演技したい」感のあるシーンが多かったのが、審査員票が入らなかった原因では。
○減点要素が少なく、ソツがないが、個性もちゃんと発揮してくるという完成度の高さ
・途中、こんな怪しい彼女をまた「かわいい」と肯定するシーンがあったが、本当にどの組もそれをやってくる。そういうの入れないと許されない時代なの?
ニューヨーク
○チャラいプランナーの演技が上手い。こなれている感。
○「OKでーす」などの印象的なセリフの効果的なリピート。
○実はギャンブルしすぎてブチギレた人間だったという新展開。
○「賞味期限」と「消費期限」など、細かい笑いもカバー。
×最後は音楽の勢いでのゴリ押し感が否めなかった。
△ソツもないしテクがあるのも分かるのだが、後にまで印象が残らない無難な感じだった気がする。結構よく見る内容になってしまっていたというか。個性の集まりみたいな大会の中なので、よりそう思ったのかもしれない。やはり、キングオブコントの決勝という舞台には、よりぶっ飛んだ意外性が求められると思う。
×演技後のMCで大御所に噛みつくのは、もはや彼にとって天丼というか義務感みたいなものなのかもしれないが、M-1の時はトップバッターだから許されたのであって、今回は実に妥当についた低評価だったと思う。負け犬の遠吠え感が否めなかった。
ザ・マミィ
・今回唯一の吉本興業以外の芸人(人力舎)にして、最年少の組。
・今回の中で随一、ヤベー奴をイジるという古典的な「毒」のある作品。
△それにヤベー奴が応戦するという展開は斬新。
○「もっと見た目で人を判断しろ!」、「まともなことばっか言わせるな!」といったパワーフレーズ。
△唐突にミュージカルへ展開。しかし、それ自体はあまり珍しくもない。クライマックスにするにはちょっと弱かったのでは。
・それまでの組が「誰も傷つかない笑い」ばかりでやや食傷気味ではあったのだが、かと言ってヤベー奴を笑いものにするこれはこれでいいのだろうか?と考えてしまい、ちょっと楽しみきれなかった・・・
・審査員の評価が高かったのは、ヤベー奴をいじるという「昔ながらの笑い」寄りだったから?と思ってみたり。お笑いって世代間差あるよね。
空気階段
○一昨年9位、昨年3位というド本命にして、メッチャ体張ってる。もぐらの体系は卑怯。笑
○出だしの身なり・セリフからインパクト強。そこから更に盛り上がっていく展開。
○「真のMとは?」など、シチュエーションにマッチしたパワーフレーズ。
○もぐらが常に顔面タイツ笑、それを引っ張るという古典的鉄板なシーンも。演技後のMCでも外さなかった事には芸人魂を感じた。
○平和的で爽やかなオチ:「けが人は一人もいなかった」→「また会える、五反田あたりで」。
○絵面の面白さ、シチュエーションの意外性、展開のテクニック、全てにおいてトップクラス。
・歴代最高得点 ←これは流石に、審査員が変わったからだと思うが。
○小峠「あの入り口で下ネタじゃないのは凄い」 ←まったくで。
マヂカルラブリー
・前の空気階段の大ウケは、追い風だったのか向かい風になったのか?
×「4:44に心霊トンネルで合わせ鏡」など、シチュエーションが凝ってる割に、シナリオに活かせていない。
○霊に体を乗っ取られる、霊に関節を決められるなど、パントマイムがほぼ全ての動きで魅せるコント。そして流石の上手さ。
×逆に言えば、松本も言っていた通り、やってることはM-1と同じであり、目新しさはなかった。
・とは言え、「きっとぶっ飛んだ事をやってくれるに違いない」という期待値が高すぎただけで、面白かったのは間違いない。予選落ちするほどとは思わなかったなー。
ファイナル3組
男性ブランコ
[感想]×1回目の女装のインパクトが強かったためか、どうも地味な絵面に見えてしまった。
〇「3円でレジ袋買えたんじゃない?」「大の袋は5円」など、細かいところを突く笑いは良かった。
×「レジ袋をケチった男の末路」と言いながら、それ以上の話に展開しない。全体的に、何を笑っていいのかよく分からなかった・・・だからどうした感というか。
×演技、テクニックなどで魅せるポイントが特に見つからなかった。誰がやっても同じになりそうとか思ってみたり。
ザ・マミィ
[感想]〇ドラマ的で勢いのあるオープニングと、その後に急にくる脱力感のギャップ。
〇その後もドラマあるあるを絡めつつ、真剣とおふざけの間を行ったり来たり。
×それ以外大きな展開がなく、一本調子だった感が否めない。ドラマごっこがやりたかっただけに見えてしまった。
×オチで展開するかと思いきや、結局音声で「ドラマー」と締めるのは、山内の評通り、裏切りがなかった。
空気階段
[感想]・前2組が終わった時点で、「どう考えても空気階段が優勝でしょ」という空気。相当なプレッシャーだったのでは。
・ここまで優勝が見えていたファイナルも珍しかったのでは。
〇もぐらのセグウェイ?の乗りこなしが普通に凄い。それだけでインパクトがあり、且つシナリオにもマッチしている。
〇自分が描いた漫画のコンセプトカフェ、と超展開
〇コーヒー=「ブラックホールの湧き水」、「メガトンパンチマンカフェが豆にこだわるなよ」といった、言葉の笑いも怠らない。
〇もぐら、メガトンパンチマンじゃなかった笑。そして手作りのメガトンパンチマンが可愛くてめっちゃ動く、という勢いのある展開とオチ。
・1回目を超えられなかった感は否めず、消去法的な優勝だったのはちょっと残念。
・とは言え、1回目のネタは面白すぎたので、優勝であることに文句がある者はそんなにおるまい。
・優勝後の二人の感極まった涙が、本当に美しい。
〇松本「いつか優勝すると思っていたが、このハイレベルの中で勝ったことは価値がある」
総評
昨年に引き続きコロナ禍の続く中での大会日程となり、出場者にとっては難しい戦いだったのだと思いますが、想像以上にハイレベルな戦いでした。
特徴的だったのは、「ハイレベル」の方向性が、例年の「ぶっ飛んだ奴らの戦い」ではなく、「ソツなく、失点の少ない演目」に徹するコンビ・トリオがほとんどだったことではないでしょうか。
「イカレたことをやったもの勝ち」の戦いから、「誰がいつ見ても面白いと思える、平均点の高い」大会に変わってきたような印象でした。
それくらい、全組面白かったです。
特に、2019年M-1以降の「誰も傷つかない笑い」が浸透してきたことを痛烈に実感しました。
突拍子もないことをする人を肯定し、それを笑いにする、そしてオチにも禍根を残さないというスタイルが、特に蛙亭、男性ブランコをはじめ、全組に渡って非常に顕著だったと思います。
ダイバーシティという思想がこんなところにまで浸透してきたかーと思わざるを得ませんでした。お笑い的には良くも悪くもなのかもしれませんが。全員が全員それをやってくれてしまうと、見てる側としてはもうちょっとバリエーションが欲しくなってしまいますね。
また、客席・審査員ともに、非常に温かかった(悪く言えば「甘やかしていた」)のも、かなり特徴的だったように思います。
特にジェラードン、うるとらブギーズの時に感じましたが、静かな(笑いを取りに来ているとはいいがたい)導入においても笑いがおきており、演者としてはとてもやりやすくいい環境だったのではないかと思います。
逆に、審査員については、もっと厳しくてもいいんじゃないかと思いました。
M-1もそうでしたが、若手が審査するとやはり低い点数をつけない傾向が強いですね。
テレビ的には「過去最高得点が出た!」などと言いブランディングができるでしょうが、このやり方は近い内に確実にインフレします。今の熱狂が未来へのツケならないといいのですが、果たしてどうなることやら。
そしてもう一つ、各演者のあらすじを書いていて思ったのは、一言で全てを言い表せるようなシンプルなシナリオが多かったなと言う点です。
そういうネタが勝つのは例年のことかもしれませんが、ほぼ全組がこういうシンプルなつくりで来た回はなかなか珍しいのではないでしょうか。過去には、かもめんたるやさらば青春の光など、かなり説明しづらい捻ったネタが多かった印象なのですが。
このあたりも、前述の「誰も傷つかない笑い」と同様、お笑いネタの裾野が広がってきたことに起因するのかなーと思ったりしてみました。
空気階段の優勝は実に妥当でしたね。納得感のある大会だったのではないかと思います。
2019、2020と彼らのブレイクの軌跡を辿ってきて、ここにきてその物語が区切りをつけたように思います。優勝時の彼らの涙をちょっと共有させてもらえた気がします。感無量ですね。
どうかこれから、どんどん売れていってほしいものです。(キングオブコントは、優勝しても売れるとは限りませんからねぇ・・・笑)
終わりに
というわけで、キングオブコント2021の審査員ごっこ(感想)でした。
今大会は本当に平均点が高く、誰もが「面白かった」と言える大会だったのではないかと思います。
その中で勝利した空気階段は、文句なしに王者に相応しい実力でした。
一方で、2020年のニッポンの社長だったり、2019年のどぶろっくだったり、一生忘れることのできないくらいのインパクトをぶつけてくる組はなかったかなと思います。個人的には特にマヂラブにそれを期待していたのですが、来年にもう一度来て欲しいです。
この閉塞した時代、もっと常識をぶち壊してくるエンターテイメントが見たいなと思ったのは贅沢な話なのでしょうかね。
ますますレベルの上がってきているお笑いに、今後も大注目したいと思います。
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