M-1グランプリ2021に見る、審査員のバイアスとニューウェーブへの期待感について

お笑い評
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今年も日本の一大イベント、M-1グランプリ2021が開催されました。

M-1グランプリ 公式サイト
M-1グランプリ2024 公式サイト「M-1グランプリ2024」 12月22日(日)午後6時30分~ABCテレビ・テレビ朝日系列生放送!敗者復活戦は午後3時00分~

2021年のM-1は、決勝進出者が発表された時点で波乱に満ちており、界隈をざわつかせていました。
主なポイントは下記の通り。

・決勝常連コンビの準決勝敗退(見取り図、ニューヨークなど)
・関西出身のコンビが少ない
・吉本の芸人が少ない(9組中5組が吉本)
・変化球系のコンビが多い?

 

昨今のお笑いの風潮として、2019年、2020年大会の余波を受けて、

・誰も傷つけない笑い
・漫才か漫才じゃないか論争

というものがトレンドになっており、その流れを色濃く受けた状態でメンバーが選出されたのが、この2021年大会だったように思います。
結果、漫才の王道とも言える関西のべしゃり系の比重が下がり、より型破りなタイプの芸人さんらが多く選ばれたのではないでしょうか。
特に、ランジャタイの決勝進出は、それだけで相当の衝撃があり、ちょっとした「事件」としてウェブ記事でも頻繁に取り上げられました。
彼らのネタで記憶に新しいのは昨年(2020年)の敗者復活戦ですが、とてもとてもゴールデン枠の舞台に出てくるような人達には思えませんでしたからねぇ。

ランジャタイが初のM-1決勝進出、国崎「スベってスベってここまで来た」(コメントあり)
ABCテレビ・テレビ朝日系で12月19日(日)に生放送される「M-1グランプリ2021」のファイナリスト9組のコメントを、お笑いナタリーで1組ずつ掲載中。8組目にランジャタイの話を紹介する。

そして、結果、今大会は数々の若手・ニューフェイスを差し置いて、50代の超オールドスタイルが優勝するということになりました。
色々思うところがあったので、感想を書き残したいと思います。

決勝10組

モグライダー

マセキ芸能社所属タレント
モグライダー
モグライダー / 蠍座の女
巨人:91点、富澤:93点、塙:92点、立川:89点、礼二:90点、
松本:89点、上沼:93点 [合計]:637点
個人的点数 : 75点
[概要] 蠍座の女の出だしが「いいえ私は」なのは可哀想。「そうね私は」と気持ちよく歌ってもらうために、その他の可能性をなくしたい。
[感想]

着眼点はとても面白い。言葉ひとつから話を広げていくのは凄い。
・意外とやっていることは古典的。
×導入の説明が長い。本編である歌に早く入ればいいのに。
×途中で話が止まってしまい妙な間がしばしば。
×展開が小さく、同じような事をやってる感が。

目の付け所はとてもよく、凄く面白くなりそうな予感がするいいスタートだったが、歌が始まってからのボケのパターンが少なかったのが残念。小手先で見せ方を変えるより、ダイナミックな視点転換があればなぁと。

 

ランジャタイ

ランジャタイ|GRAPE COMPANY- 株式会社グレープカンパニー
芸能プロダクション、株式会社グレープカンパニーの公式サイト。サンドウィッチマン・永野・カミナリ・高橋英樹・高橋真麻などが所属。ライブ情報、チケット情報、グッズ情報、スケジュールなどを紹介。
ランジャタイ / 風が強い日の猫
巨人:87点、富澤:91点、塙:90点、立川:96点、礼二:89点、
松本:87点、上沼:88点 [合計]:628点
個人的点数 : 67点
[概要] 風が強い日に飛ばされてきた猫が体の中に入って来て、操られてしまう。
[感想]

今大会最大の飛び道具が2番手というのは、本人にとっても番組にとっても不運だった。
○ツカミの音芸面白い。笑
○猫が体に入る、頭にコクピット、体にエレベーターというぶっ飛んだ設定
×ひとつの小ボケを引っ張りすぎ。例えばムーンウォーク。明らかに笑いが小さくなっており、完全に天丼失敗。
×偏差値の低すぎる内容・・・意味不明すぎて見てて疲れてしまった
・松本「見てる側の精神状態に依るよね」→ほんそれ。私は調子がよくなかったのかもしれない。
待合席でモノボケをするという新しい文化を生み出したのは評価したい。

色々やってはいるが、結局は「奇想天外」という括りの一本調子だったため、途中でダレてしまった印象。持ち時間が2分だったらもっと点数は上がったのではないだろうか。そう思えば、見る側が識別できる大きなテーマを2つ以上持てれば、大成する可能性は否定できない。

 

ゆにばーす

ゆにばーす プロフィール|吉本興業株式会社
吉本興業に所属しているゆにばーすのプロフィールをご紹介いたします。
ゆにばーす / ディベート
巨人:89点、富澤:92点、塙:91点、立川:91点、礼二:93点、
松本:88点、上沼:94点 [合計]:638点
個人的点数 : 92点
[概要] ディベートの練習に、男女の友情が成り立つかを論じ合う。川瀬名人は「なし」派、ハラちゃんは「あり」派。
[感想]

○ド王道漫才。実に教科書的な文句の付け所のない完成度
×逆にいえば、既存の枠を出ていないともいえる。
・ランジャタイの後に王道という出順は、一見追い風だったが、逆にインパクトが薄くなった感も。
○ハラちゃんのツカミ面白っ。
○過去にやってた、川瀬名人が叫ぶというお約束の出だしを捨てているあたり、本気を感じた
○物語を読んでいるような流麗なシナリオ。作家としての才能がありありと出ている。
○プレーヤーとしてもノーミス。本当に非の打ち所がない。
○動きも取り入れて視覚的にも面白い

今大会で最もクオリティの高い漫才だったように思う。上沼恵美子に「完璧」と言わしめる非の打ち所のなさは、川瀬名人のM-1にかける狂気に満ちた執念すら感じる。
敗因として考えられるのは、教科書的すぎた事か。それは2000年代のM-1だったら絶賛され優勝間違いなしだったであろう美点だが、昨今の「漫才か漫才じゃないか論争」の中にあって、「新しい事がない」ことはマイナス評価に繋がったのではないか。
ただ、それは後続の錦鯉やインディアンスも同じで、後半の番組の盛り上げのために犠牲にされた感が否めない。出順9組目だったら、優勝していたと思う。そう思うと、唯々不運

あと強いて言うなら、漫才外の部分で(主に川瀬名人が)可愛気がなさすぎるのが残念。
漫才の甲子園、試合に集中したいのは分かるが、一丸となって番組を盛り上げようという気概も必要ではないかと思った。
勿論、審査に全く関係すべきことではないのだが、そんなことで悪印象を残すのは唯々勿体ない・・・

 

ハライチ(敗者復活枠)

ハライチ | ワタナベエンターテインメント
ワタナベエンターテインメント公式サイト。お笑い芸人から俳優、ミュージシャン、文化人まで幅広い所属アーティストのプロフィールや最新情報などをお届けします。
ハライチ / 大人になってやりたいこと
巨人:88点、富澤:90点、塙:89点、立川:90点、礼二:89点、
松本:92点、上沼:98点 [合計]:636点
個人的点数 : 69点
[概要] 人の話を遮ってくるくせに、自分の話を遮られるとキレ散らかすやつ。
[感想]

△ツカミとしてのジャブなしで、いきなり本編。見てる側としては、もう始まってる?みたいな戸惑いがあった。
×同じ事をやりすぎ。長い、しつこい、単調で飽きる
○岩井が動くという新しい一面を見せてきた。
×澤部の長所である演技力が活かされていない。岩井の演技はバリエーションがなく、正直弱い。
×敗者復活戦のネタの方が面白かった・・・

敗者復活戦からネタを変えてきたのは、ファイナルに温存したのか、それとも勝ち負けよりもやりたいことをやりきる事を優先したのか。
いずれにせよ、栄えある敗者復活という有終の美を飾り、ラストイヤーで清々しく散っていった感がある。「いい最終回だった」という感じだろうか。

 

真空ジェシカ

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真空ジェシカ / 一日市長
巨人:90点、富澤:89点、塙:92点、立川:94点、礼二:94点、
松本:90点、上沼:89点 [合計]:638点
個人的点数 : 76点
[概要] 一日市長の最中に襲いかかる数々の不条理。
[感想]

○花道から小芝居をするという、史上最速のツカミ。余裕あるなぁ。
×本編始まってからのツカミが微妙。出だしはイマイチだったか。
ボケのセンスが光った。「隣の町の地図、踏めるかい?」「初笑いだ。」「ハンドサインで”HELP ME”」
×間が詰まってなく、静寂の時間が勿体ない。練度が低いなと感じた。
×ネタが散発で繋がりや脈絡がない。
×小さい笑いの積み重ねで小さく収まってしまった。良くも悪くも無難な出来。

その若さや堂々・飄々たる態度から、どんな奇抜なことをするのかと期待してしまったが、蓋を開けてみれば実に王道スタイルの漫才だった。
残念だったのはネタにまとまりがなく、後から思い出せるような内容ではなかった事。記憶に残らない漫才は評価されないと思う。
一方、散発なボケの中でも、記憶に残るフレーズが幾つかあったのは、センスがある証拠だろう。今後テクニックを身につければ、大きく成功するコンビに成り得るのではないだろうか。

 

オズワルド

オズワルド プロフィール|吉本興業株式会社
吉本興業に所属しているオズワルドのプロフィールをご紹介いたします。
オズワルド / 友達をくれ
巨人:94点、富澤:95点、塙:95点、立川:96点、礼二:96点、
松本:96点、上沼:93点 [合計]:665点
個人的点数 : 83点
[概要] 友達がいないから、お前の友達をくれ。一番要らない奴でいいから。
[感想]

・非常に静かな出だし。風格があるなぁ。
安定感抜群。声の張りやテンポの変化による緩急の付け方が流石。
○10分くらい全然聴いてられるような優しく心地よいリズム
・立川「東京の品の良いところが出てる」→実にそれな。
×サイコパスすぎてついて行けない感。ボケが笑いどころじゃない。
○「脈測られてるんだけどー」は凄い発想だなと思った。

昨年には松本人志とオール巨人に真逆の指摘をされた可哀想な彼らだが、静かながら時に激しくと、両者の指摘を上手く取り込んできた。親友オチで丸く締めたあたりは、時代の流れを汲み取っている感もあり、2人の聞く力の高さが表れた漫才だったのではないだろうか。
個人的には、大きく爆発するところがなく、高得点をつけづらい内容だなとは思った。が、爆発がないからこそ、長時間聞いていられる安らかさがあるわけで、彼らは賞レースよりも名人芸を極める事を目指すべき器なのではないかと感じた。

 

ロングコートダディ

ロングコートダディ プロフィール|吉本興業株式会社
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ロングコートダディ / 死んだ後の魂
巨人:89点、富澤:90点、塙:93点、立川:95点、礼二:95点、
松本:91点、上沼:96点 [合計]:649点
個人的点数 : 74点
[概要] 来世はワニになりたい人が、死んだ後の魂になって、転生先を天界で聞く。
[感想]

○他と全く被る事のない、斬新でオリジナリティ溢れる設定
○肉うどんという分かりやすいパワーワード
×オチで肉うどんを手放してしまったのはとても勿体なかった。ワゴンRという、それまでのフリと全く繋がりのないワードチョイスも疑問。
・客席が驚くほど沸いていたが・・・ファン?
×顔芸頼みで押してしまったのはちょっと残念。ネタ自体にもっと深みがほしかった。

近年見た彼らのネタの中では、一番良かったと思う。特にキングオブコント2020のネタとは雲泥の差だった。
良くも悪くも、実にシンプルで使い古されたボケの数々。しかしそれを古びているように見せないのは、斬新な根本の設定があってこそだろう。これは作家の技量としてどう評価すればいいのだろうか・・・
私の中では、まだ彼らは「未知数」。これから先、ありきたりでつまらない奴等になってしまうのか、それとも芸達者で唯一無二のネタをやる存在になれるのかは、正直分からない。ただ一つ言えるのは、今年が未完成の状態であったことだ。決勝の舞台は早すぎたと思う。

 

錦鯉

[錦鯉] プロフィール
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錦鯉 / 合コンに50代が参加
巨人:92点、富澤:94点、塙:94点、立川:90点、礼二:96点、
松本:94点、上沼:95点 [合計]:655点
個人的点数 : 79点
[概要] 50代の長谷川さんが若者の合コンに参加する。
[感想]

・ボケ主導の、超オールドスタイル。明らかに、ニュースタイルの面々への当て馬
ツッコミの口が悪いなぁ。シニア漫才ってみんなそうだよなぁ。
△オヤジノリで空回りしている感が痛々しかった。けれど、年代が嵌っている人にはピンポイントで刺さるのだろう。
勢いがある。力強さ・空気を持っていくパワーが凄い。
〇後半のスピードアップにより、緩急が生まれた点も善し。
×ツッコミが一辺倒。頭ペチペチしすぎ。
巨人「紙芝居を知らないであろうのに、なんで笑うんだろう」→確かに。それがウデってことなんでしょうか。

今年のメンツの中で、明らかに一番のオールドスタイル。昭和の漫才を最も色濃く出してくる組だった。
正直、彼らの年齢にアドバンテージが働いたことは否めないのではないだろうか。例えば20代の若手が同じネタをやっても、おそらく評価はされないだろう。番組的にも、これまでにない発想を見せる若手の中に、原始的な笑いをとる50代という対立構造が面白くて選出した意図があったのではないだろうかと邪推せざるを得ない。
基準点作りとして投入されたのかと思いきや、ファイナル進出。やはり人間は基本的にコンサバなのかも知れない。特に昨今、エキセントリックな傾向にある笑いに対するアンチテーゼとして、シニア層が求める笑いを提供するという点では、実に価値のある園芸なのではないかとも言える。

 

インディアンス

インディアンス プロフィール|吉本興業株式会社
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インディアンス / 心霊
巨人:92点、富澤:91点、塙:93点、立川:94点、礼二:94点、
松本:93点、上沼:98点 [合計]:655点
個人的点数 : 80点
[概要] 心霊スポットにいくけど、ボケが陽気で全然怖くない。
[感想]

△しょうもない小ボケの連打。錦鯉に続き、実に昭和的なオールドスタイル
テンポ、空気を引き寄せるパワーは前年・前々年に続き流石の一言。
○20代とも50代とも世代を問わない笑い
×ボケや展開は全くありきたり。誰が書いてもこのクオリティは出せるのではないかというレベル。
○そんな内容で爆笑をとっていくのだから、技術が半端ない

錦鯉と同じく、オールドスタイルとして基準点作りとして投入されたのであろうと思っているが、これまた好評価でファイナル進出となった。
個人的には、2019年から何も進化のない内容を繰り返す彼らを出し続ける意味はあるのだろうか?と疑問ではある。もう笑いのスタイルを確立し、面白さは日本中に伝わっているのだから、評価を得るためだけにM-1に参加する必要はないのではないだろうか?と思ってしまう。

 

もも

もも プロフィール|吉本興業株式会社
吉本興業に所属しているもものプロフィールをご紹介いたします。
もも / 顔
巨人:91点、富澤:90点、塙:91点、立川:96点、礼二:95点、
松本:92点、上沼:90点 [合計]:645点
個人的点数 : 77点
[概要] 「なんでやねん、お前xxx顔やろ」の応酬
[感想]

昨今のトレンドに逆行する、顔いじり、レッテル貼り主体のスタイル。
○分かりやすい構造、ここで笑えば良いのねと安心して笑えるシステム
×キャラが浸透していないのにキャラいじりは裏目だったのでは。ボケが本当に的外れなのかが分からんのよ。
×会場の笑いに寄り添っていない。笑い声や拍手に被る事をお構いなしに、機械的に続いてしまっていた。
×オチでそれまでのスタイルを捨ててしまうのはいかがなものか。

M-1の常勝パターンをよく研究して、システムを作ってきたなと感じた(実際そうなのかは分からないが)。具体的には、Wボケ、固定フレーズによる畳み込みという印象的なスタイルが、良くも悪くも、実に真剣に「作ってきたな」という印象だった。
惜しむらくは、非常に台本的だった事。会場が笑おうが笑うまいがお構いなしに、自分たちが作ったレールを走っていくような印象で、水物であるはずの漫才をシステムとして捉えすぎだと感じた。
しかしそれは逆に、勝つ要素を計算できるクレバーさがあるとも言え、それも立派な才能だと思う。この組も、決勝は早すぎたのではないだろうか。松本人志の言うとおり、3年後の成熟が楽しみな果実だ。

 

ファイナル3組

インディアンス

インディアンス プロフィール|吉本興業株式会社
吉本興業に所属しているインディアンスのプロフィールをご紹介いたします。
インディアンス / 売れたい
[得票]:1票
個人的点数 : 80点
[概要] 売れて町で声をかけられたい。
[感想]

×一本目と全く一緒
○「来週もまた見てくださいねー。いっせーのせ、ゼロ」
×度々の天丼不発(「ウィーン」とか)

彼らの漫才にとって、テーマやストーリーは飾りのようなもの。本質は一発ギャグ集であり、題材はなんでもよいのだ。
それだけに、漫才としては完全に底が見えた感がある。勿論十二分に面白く、深い深い底だ。だがそこに新鮮さや発見はもはやない

錦鯉

[錦鯉] プロフィール
株式会社ソニー・ミュージックアーティスツのオフィシャルサイトです。 所属アーティストのプロフィールや最新情報などをお届けします。
錦鯉 / 町に逃げたサルを捕まえたい
[得票]:5票
個人的点数 : 81点
[概要] 町に逃げたサルを捕まえたい50代のおっさん。
[感想]

○冒頭の「サルの方が意味が分かるよ」が全てを語っている。
○「森の中へ逃げ込んだ」「じゃあもういいじゃねえか」全否定草
×一本目と全く一緒。(ボケのクオリティが多少良くはなっていた気はするが)
×内容が馬鹿すぎる・・・

こちらもインディアンスと全く同じ感想。彼らの芸風、技量はもう十二分に見えてしまった
正直、閃くような才能は感じられない。彼らの強みは、畳みかけるようなテンポの良さや声量、人を惹き付けるパワーといった後天的な技量であり、努力の漫才なのだろうと思う。
そこに美点を見出し、勝たせる要素があったのだろうなぁ、と思うのは、穿ち過ぎだろうか。

 

オズワルド

オズワルド プロフィール|吉本興業株式会社
吉本興業に所属しているオズワルドのプロフィールをご紹介いたします。
オズワルド / 列に割り込むおじさん
[得票]:1票
個人的点数 : 82点
[概要] 列に割り込むおじさんと、それを咎めるイマジナリー伊藤。おじさんは悪か善か。
[感想]

○ファイナルでも変わらぬ、非常に静かな出だし。貫禄があるなぁ。
○ファイナルとは思えないゆったりとした空気感。何処でやっても安定的にうけるのであろう。
×やはりサイコパス感が強く、笑えないボケが諸所に。
×畠中の中で意見が割れるというボケは、マイナスに出たのではないか。主張の一貫性のなさは見る側の体力を奪うと思う。
△良くも悪くも、緩急の付け方が型に嵌まっている印象だった。

ファイナル3組の中でも高い完成度を誇りながら、同時に最も成長の余地を残した組だったと言えるのではないだろうか。
彼らの敗因は、会場を引き込めなかった事に尽きると思う。それは偶々だったのかも知れないが、会場は明らかに、錦鯉やインディアンスと言った分かりやすい笑いに共鳴していた。サイコパス要素強めの彼らは、一線を引かれてしまっていたように思う。

とは言え、M-1ファイナルの舞台で自分たちのペースを崩さず、ゆったりとした世界観を構築するのはとんでもないことである。今大会最高峰の技術力を持っている事は明白であり、敗北感のない敗北だったのではないだろうか。

 

総評

というわけで、優勝は錦鯉でした。
マヂカルラブリーの優勝を受けて、「王道か、ニュースタイルか」が重要なキーワードとして問われた今年のM-1は、結果的には、「王道」が制したと言えるのかなと思います。

それを成し遂げさせたのは、審査員のバイアスによるところが大きいのでは、という疑問もありました。
今年の評価は明らかに技術点寄りであり、ネタの練度・ストーリー性といったものは軽視されたと言わざるを得ません。審査員が最初から王道を望んでいた、と言えるのではないかと。
この傾向が有利に働いたのは、錦鯉・インディアンス。不利に働いたのは、ゆにばーす・もも、といったところでしょうか。

一方で、そうとも言い切れない要素として、ニューフェイス勢の不発が挙げられます。
奇抜さを追求する枠として選ばれたはずの若手勢が、出順の影響もあったのでしょうが、大きなインパクトを生み出す事が出来ず致し方なく王道が評価された、という感も否めません。それくらい、若手勢の新しいスタイルのネタは隙が多く、評価しづらい未成熟な完成度だったと思います。正直、IHIのCMの方が面白かったと言う声があったのも分かります。(勿論ジョークですよ笑)

【IHI】TVCM「ドイツ」/産業ソリューション 篇

そういった意味で、番組サイドがけしかけた「王道か、ニュースタイルか」という熱いテーマは、燃え盛る事なく保守的な着地を見せてしまったというところが、残念極まるところでした。
同じ王道でも、金属バットが復活していたらもっと掻き回せていたのでは・・・という気持ちもあります。まぁ仕方のないところですがねぇ。

だがしかし、それにしても、審査員の日和見的な採点は目に余りました。
まず、点数被りすぎ。実に消極的な評価姿勢で、誰も傷つかないように遠慮しているかような歯切れの悪い点数付けは全くエンタメ的ではありませんでした。審査員が「誰も傷つけない笑い」をやってどうするのかと。
また、前半に点数つけなすぎ。番組の盛り上がりを意識しての事なのでしょうが、都合良く後半の組に点数が偏りすぎです。ゆにばーすなどはその最たる被害者でしょう。あまりにも運の要素が強すぎて、全くフェアではありません
錦鯉が優勝者に選ばれたのも、50代であることに対する贔屓目が如実に現れたなと思えてなりません。長谷川さんの勝利の涙は清々しく感動的ではありましたが、50代にしてM-1優勝、という美談に縋った審査をしたのではあるまいかという疑念はなくもありません。
そういった点を考えると、今回の審査は納得に足るものだったでしょうか?私はイマイチそうは思えませんでした。

まぁ実際、ファイナル3組の実力にほぼ差はなかったとは思います。それを思えば、誰に投票したとて文句を言われる筋合いはないのかも知れません。ので、錦鯉の優勝を否定する心算は全くないのですが。
霜降り明星、ミルクボーイ、そしてマヂカルラブリーと、美しすぎる勝利が続いたので、ハードルが上がりすぎていた感はありますね。

 

と、主に審査員に対する辛口の感想にはなってしまいましたが、全体で見ればやはりレベルの向上が実感でき、とてもよい大会だったと思います。
特に今回評価を得られなかった若手勢は、将来に爆発する余地を充分に感じさせてくれ、未来に期待を残す結果でした。
これからも、この日本にしかないであろう美しき言葉の格闘技を、芸術的なところに高めていっていただけることを切望して止みません。

終わりに

ということで、M-1グランプリ2021の感想でした。

個人的には今年のMVPは、金属バットヨネダ2000に贈りたいですね。(どっちも決勝に出てない・・・笑)

来年も福来たる良い年でありますように。

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