己龍単独巡業「千幾鵺行」ファイナル 日本武道館公演 8000字ライブレポ

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2021年4月10日、ヴィジュアル系バンド「己龍」のツアーファイナル日本武道館公演が行われ、

私は自宅から配信で視聴しました。

 

公演自体が素晴らしかった事もさることながら、「これが令和のライブか!」と感じさせられる数々の発見と驚きがあり、とても刺激的で思い出深い公演になりました。

今回はそれについて書き留めたいと思います。

 

公演までの道① 新曲「鵺」

まず、公演に至るまでの過程を、2つの観点から取り上げたいと思います。

1点目は、ニューシングル「鵺」について。

 

今回の公演タイトル「千幾行」(せんきやこう)にも漢字の入った「鵺」は、日本武道館公演が決まってから、文字通りその表題曲となるべく打ち出された新曲です。

作詞の酒井参輝さんは、「鵺というものは、見る人によって姿形が変わる、しかしそれはあくまで鵺という一つのものである」という特徴を解釈して詩を作っており、下記のように語っています。

 

「人によって様々な正解・不正解があり、同じ様に自身が持つ正義というものがある。
皆が皆、自分の信念を持って生きているのだから、すれ違いが生まれるのは当然の事。
自分の信念、意識というものを大事にしても、それは悪い事じゃないんだよ、
そういう「自分」というものをちゃんと持って生きていきましょう、
という思いを書いた歌詞。」

 

また、公演タイトルの「千幾鵺行」という言葉については、前回(2016年)に行われた日本武道館公演「百鬼夜行」とも掛かっており、前回(百)を上回る(千)という決意も込められていることが覗えます。加えて、公演タイトルを決定したと思われる酒井参輝さんは、下記のように語っています。

 

「鵺という言葉に、チーム己龍、ファンの皆様といった全てを当てはめている。
幾千の鵺=我々皆なで、未来へ向かう巡業にしましょう、という思いを込めている。」

また、の歌詞中に出てくる「千姿万態」「千言万語」という、語頭が「千」の四字熟語に擬えている、という意図もあるのかなと思います。

 

曲自体は、己龍の王道とも言うべき、昭和歌謡のようなノスタルジックでキャッチーなメロディーを、ゴリゴリにメタルアレンジした、極めてダークでヘヴィーなメロコア曲となっています。
サビ以外にリフレインのない複雑なメロディー展開、ハードなリフと静かなアルペジオの対比、鵺の声をイメージしていると思わせる人間離れしたシャウトなど、聴き応え抜群です。

己龍「鵺」MUSIC VIDEO

私的に、中でも特筆したいのは、やはり歌詞でしょうか。

2020年リリースのシングル「私塗レ」では、作詞の酒井参輝さんの内面が深く描かれました。

 

「これがであるからこそ それ以外に非ず」
そんな風に一体どれだけのを殺してきたのでしょう
一人でもを救えば それはへの裏切り
死する痛み それと向き合う事が「生きる」と言う事なのでしょう」

-「塗レ

 

そしてこの年に公開された2曲の新曲は、この歌詞の続編・「“私”シリーズ」とでも言うべきように、自身の存在を問うことに焦点を当てた内容でした。

 

「人間」は一人で生きるに非ず
貪り貪られ穴だらけ
「人」は独りで生き・・・死に果てる
」とは何?その意味は?

-「天邪鬼

 

としてを生き
のままに死のう
その日は刹那の果てにぽつり・・・
嗚呼 待惚け

-「

 

そして2021年リリースの新曲「鵺」においても、それは続きます。

 

塗り潰した闇に谺するのは
「これが、他は知らぬ存ぜぬ」と唄う声
ただ・・・目に見える「何か」に怯えては
狂ぅ・・・ 叫びが舞う 金切りの宵

-「

 

これら三作品が、「私塗レ」が自己嫌悪、「天邪鬼」が自問自答、「」が自己肯定と、自身を見つめて来た過程を表現した連作にあたる歌詞であるとするなら、続編である「」は、ようやく得られた自己肯定を塗り潰してくる周囲の人間から心を守る、自己防衛の詩なのかなと思います。

 

 

このように、新曲「」は作品としても、公演の表題曲としても、明確な意思とヴィジョンを持って描き出された「表現の塊」とも言うべきものでした。
ここぞという大舞台を前に、これぞという作品を出してくる辺り、流石ビッグバンド、これが13年に至るキャリアによって築かれた実力なのだなと痛感させられたのでした。

 

公演までの道② 現代的なプロモーション活動

公演に至るまでの過程の2点目として、現代的なプロモーション活動を挙げたいと思います。

 

通常のバンドの広報活動と言えば、街中の看板広告、フライヤー、インストアイベント、大物であればTVやラジオ出演による宣伝という手もあるでしょう。実際己龍も、渋谷駅に特大パネルを設置したり、マツコの知らない世界でMVが流れたりと言った宣伝を行っています。(後者は自発的なものなのかどうか分かりませんが)

 

 

 

しかし私がこれら以上に着目していたのは、自身のYouTubeチャンネルを使っての斬新なプロモーションです。

 

昨今のYouTubeは、チャンネルを持たないアーティストは稀であるほどに発展したメディアですが、その多くはMVやライブ動画の配信を主としたものであり、アーティストがオリジナルコンテンツを発信しているバンドはさほど多くはありません。ましてや、食レポやゲーム実況、単なる雑談など、音楽活動とは全く関係のないものを除外すると、ほとんど何も残らないというのが現状でしょう。

 

そのような中で己龍は、自身のチャンネルで「自分達の音楽を見せること」に重きを置く、非常に稀有な存在だと感じています。

 

例えば、目隠しをするなど特殊な状態で演奏する「極限リハーサル」、自分たちの楽曲を用いた単楽器のみでの曲当てクイズ本人による弾いてみた動画など、ファンにはたまらないサービス精神に溢れたコンテンツを高頻度で提供しているのです。

【極限リハーサル神回】GACKTさんの無茶ぶりに全て応えてきた!【GACKTさんコラボ/鵺】

 

その己龍チャンネルを使った、日本武道館に向けてのプロモーションは、非常に斬新なものでした。

まずは「武道館を決めたあの日の事」と銘打ち、メンバーが日本武道館公演の実施を決める打ち合わせをドキュメンタリーとして公開。通常、公演決定という「結果」しか見ることのできないファンにとっては、非常に珍しく貴重な、嬉しい映像でした。

武道館を決めたあの日の事

また、情熱大陸をオマージュした「己龍大陸」なる各メンバーのインタビュー動画で武道館公演への意気込みを発信。1人1本の全5本の動画で、それぞれ12分程度、合計1時間にも上る長尺のものでした。TVのCMでは僅か30秒、どこかの番組でインタビューを受けたとしても通常は1人一言がせいぜいであろうことを思えば、こちらもファンにとって非常に嬉しいものでした。

【己龍大陸】一色日和
【己龍大陸】遠海准司
【己龍大陸】酒井参輝
【己龍大陸】九条武政
【己龍大陸】黒崎眞弥

更には、己龍の代表曲で構成された、1時間程度の無料配信ライブを決行。ライブのド定番曲を復習する場でもありましたが、何より、最新の己龍が演奏することでレベルアップした楽曲を聴かせてくれることで、武道館公演が熱いものになるであることを予感させるものでした。

 

2021年02月22日 無料配信公演「夢龍拝真」セットリスト

01. 雨夜ニ笑エバ
02. 反芻
03. 私塗レ

~MC01~

04. 転生輪廻
05. 朔宵
06. 花鳥風月
07. 灯

~MC02~

08. 九尾
09. 百鬼夜行
10. 鵺

~MC03~

アウトロ(鵺 Vo.off)

 

 

このように、YouTubeというメディア媒体をフルに活用し、TVなどの巨大なパワーに頼ることなく自身でコンテンツを発信していくというスタイルは非常に現代的であると感じましたし、無料であるには過剰なファンサービスを伴うプロモーション活動のクオリティは感嘆を伴うほど高いものでした。

更に驚嘆すべきことは、このための動画編集をメンバー自身が行っている点です。

私は正直、武道館公演が決まったと聞いた時、4月まで動画配信は頻度を落とすか、最悪休止するのだろうなと思っていました。

しかし実際には、動画の更新頻度はほとんど落ちることなく、前述した武道館公演に向けて期待を煽るコンテンツが届けられたのです。その忙しさや労力を想像するだけで眩暈がしそうです。

 

己龍 九条武政に聞く、YouTube活動から見出したヴィジュアル系シーンの活路 「夢を見ることができなくなったら終わり」
己龍は2010年代のインディーズヴィジュアル系シーンを牽引したバンドだ。そんな彼らが2年前から所属プロダクション・B.P.RECORDSのチャンネルで、YouTube動画の配信を始めた(昨年11月からはバンド個別チャンネルに以降)。機材紹介や楽曲解説だけでなく、「利き手と逆で演奏してみた」、「1時間で…

 

勿論、普通のバンドはこんな活動に宣伝効果が伴うとは思えません。己龍という13年かけて積み上げた実力とネームバリューがあってこそのもので、実際のところ武道館公演の成功にどれだけ寄与したのかは測りづらいところではあるでしょう。

しかし、並んだ動画を見ていると、並々ならぬメンバーの武道館への決意、熱量、意気込みに溢れていることが明確に伝わり、「これはひょっとして、凄い公演になるのではないか」、そんな期待感が高まり続けていくのを感じました。少なくとも私は、YouTubeのレコメンドで己龍を知り、この動画ラッシュに心動かされて配信チケットを購入したのでした。

 

こうして、計算されつくした新曲、全力の現代的プロモーションを携え、満を持して、己龍の自身3度目となる、5年振りの日本武道館公演が幕を開けたのでした。

 

本編公演① 酒井参輝キラーチューン

17:00から10分ほど遅れて開演。
私は配信組のため、自室の壁にプロジェクタで投影しています。

画質はどうやってもPCには劣りますが、とにかく画面が大きく(縦1.5m、横2mくらい)臨場感があるのと、奮発して買った高いプロジェクタのため、低音がとてもクリアに聞こえるところがいいところです。

 

「鵺」をアレンジしたSEで入場、本編1曲目は、意外にも(己龍にしては)スローな「私ハ傀儡、猿轡ノ人形」。
Vo.黒崎眞弥さんの囁くような低音から始まる、3度目の武道館の舞台という風格を感じさせる落ち着いた出だしとなりました。

曲の最後にテンポが速くなると、続けて一気に2曲目「日出ズル國」に突入。
前回武道館公演のオープニングを飾ったこの曲を早い段階に持ってきたのは、前回公演の流れを継承することの示唆でしょうか。

そしてキラーチューンでたたみ掛ける様に、「朧月夜」「九尾」「百鬼夜行」という代表曲を続けてプレイ。ここまで全て酒井参輝さんの楽曲で構成された非常にハードなナンバーの連続に、客席はヘドバンしっぱなしです。

極悪な曲調に良い意味で似つかわしくない、一色日和さん、遠海准司さんの満面の笑みが印象的でした。

己龍「百鬼夜行」MUSIC VIDEO

 

本編公演② 九条武政キラーチューン

「遡る事、2015年「龍跳狐臥」、そして2016年「百鬼夜行」。
3度目の日本武道館、5年ぶりにこの場所へと帰って参りました。
千秋楽「千幾鵺行」、如何にしてこの軌跡を辿ってきたものか、今こそ見定めの時です。」

 

黒崎眞弥さんの短いMCを挟み、本公演のメインディッシュである「」へ。
火柱が立ち昇る特効にド派手な照明と、会場がダークな彩りで満たされていきます。
何気に、この「」以降、ほとんどが過去2回の日本武道館公演では披露されていない曲で構成される事になります。(被りは「叫声」のみ)
昔のセットリストに縛られず新しい己龍を見せたい、という意思表示なのかもしれませんね。

 

そしてそのまま、同曲のカップリングである「獄焔」を皮切りに、九条武政さんの曲が並ぶキラーチューンの第二波へ。
酒井参輝さんの曲はあくまでバンドサウンドが前に出てくるのに対し、九条武政さんの曲は時としてシンセが主役に聞こえるアレンジになっていることが多いと思います。もっと言えば、前者はアナログな、後者はデジタルな音作りという点で明確な特徴の違いがあります。それが、己龍全体の音楽性に広い世界観と多彩なバリエーションを生み出していると思います。

 

オナジアナノムジナ」「花一匁」の独特のノリは、それまでのメタルな世界観と上手く差別化され、会場に新鮮な熱を届けていたと思います。

己龍「花一匁」振付講座

 

本編公演③ ヴォーカルが魅せる妖艶パート

バックスクリーンに殴り書いたようなフォントの歌詞が印象的な「煉獄」、ロックサウンドながら歌詞と歌い方が切ない「伽藍堂」からは、ヴォーカルの表現力が活きる曲が続きます。客席の首も暫しの休息へ。
個人的にこの曲は、己龍トップ5に入る好きな曲のため、武道館公演で観れて感無量でした。

酒井参輝「伽藍堂」

シャッフルな「蛇婬」では声で舐られるような妖しさが加速。ヴィジュアル系ならではの妖艶な世界観が広がります。

一方「蛾ゲハ蝶」では、緑のスポットを浴びて笑顔いっぱいに中央で踊る九条武政さんから、楽しくて堪らないという気持ちが伝わってくるようで、曲の世界観とは別に、思わずほっこりしてしまいます。

 

本編公演④ トドメを刺す鉄板曲

「さぞや、もどかしい事だろうな。制限下において、この瞬間でさえも。
だが、俺にはそんなことはどうでもいい。やるか、やらねぇのか、それとも指を咥えてみてるだけか。お前等はどちら側につく。来るならとっととここまで来いや!
上っ面なんかどうでもいい、見せてみろよ!」

 

マスクをつけ、声も出せない客席を慮りながらも煽る黒崎眞弥さんのMCを皮切りに「手纏ノ端無キガ如シ」のイントロが奏でられ、再び首をもぎ取りにくるヘヴィーチューンの連続へ。客席だけでなく、演者一同も激しくヘドバン、折り畳みを繰り返します。

 

野箆坊」では黒崎眞弥さんの重く低い囁きと高く抜けるようなシャウトの対比が印象的でした。
」では再び火柱が立ち、コール&レスポンスできない分まで声を張り上げる酒井参輝さん。空気が一気に熱を帯びてきます。

 

無垢」では一色日和さんが吼えマイクスタンドを後ろに投げ捨てるというパフォーマンスも。ベーシストの方がそれをやると、どうしてもLUNA SEAの「ROSIER」を彷彿としてしまいます。もしオマージュとしてやっているのなら、「無垢」という曲が己龍にとっての王道にして代表の曲、という自負の表れなのかもしれません。とてつもない迫力でした。

 

本編ラストは「情ノ華」。これまでのヘヴィーナンバーに劣らないハードなリフと重低音が、ラストに相応しいメロディアスで華やかな空気に見事にブリッジし、緊張感を保ちつつも美しい終わりへ。

全18曲という曲数を感じさせない、寧ろ非常に短いと感じてしまう程に濃密な時間は、あっという間に終わりを迎えたのでした。

己龍「情ノ華」MUSIC VIDEO

本編公演⑤ 新フルアルバムとツアーの告知

アンコールから突如流された映像は、6月23日に発売が決定した7thフルアルバム「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」のMVと、同タイトルの単独巡業のお知らせ。ファイナルは8月3日、九条武政生誕祭としてZepp Tokyoで行われるとのこと。

己龍7thフルアルバム「曼珠沙華」発売決定
己龍 7thフルアルバム「曼珠沙華」2021年6月23日(水) 2type同時発売 ■Atype【初回限定盤】CD+DVD価格4,400円(税抜価格4,000円)/BPRVD-416JAN:4582281541671CD14曲+DVD「曼珠沙華」MV+メイキング+MVマルチアングル 封入特典:2タイプ購入特典用応募...

 

武道館公演の準備やYouTubeの更新でも相当ハードだったでしょうに、更にアルバムレコーディングまで行っていたとは・・・己龍の活動ペースは良い意味で異常ですね。

 

ツアーグッズのパーカーやTシャツに着替えた各メンバーからのMCでは、コロナ禍においてもライブが開催できた事への感謝、アルバム・ツアーの話、次は同じB.P.R事務所の後輩3バンドに武道館に連れてきて欲しいといった激励などが飛ばされました。(「俺たちは、ヴィジュアル系の山口百恵になる!」という名言も炸裂)

特に印象的だったのは、「会場に来れないことを気にしないでほしい」ということ、「(コロナを)恨んでいても始まらない、現状での楽しみ方を見つけて楽しんで欲しい」という言葉でした。

 

前2回の武道館公演と比べて、ソーシャルディスタンスのため明らかに人が少ない会場で、声援を受ける事も出来ない晴れ舞台に、メンバーにも様々思うところがあったのでしょう。

 

しかし私は、配信という形でなければなかなか会場に足を運べなかったであろう事(ライブは静かに見たい派なので、モッシュやヘドバンの入り乱れるノリはやはり抵抗があるのです)、そしてコロナがなかったら配信という形もなかったであろうことを思えば、今ならではの楽しみ方という恩恵を満喫できていてラッキーだなと感じています。

 

これから世の中の規制がなくなっていき、ライブに活気が戻るとしても、配信という形は根付いて欲しいなと思います。

 

本編公演⑥ 爽やかなアンコール

アンコールでは「春時雨」を始めとし、ダークな色調で揃えられた本編には入れられなかったのであろう、爽やかな曲が並べられました。

特に「」は、本日唯一のバラード。黒崎眞弥さんの声は本当に多彩で、あれだけデスヴォイスを披露していた人と同一人物とは思えないくらい優しい歌声に聞き惚れてしまいます。会場を仄かな光が満たしました。

叫声」の歌詞は、発声禁止の会場とシンクロし、無音の叫びとなって響いていました。「僕の叫びは君に届いてますか 言葉が声にならずとも・・・」とは、己龍メンバーだけでなく、会場にいた方や配信視聴者の心情そのものだったのではないでしょうか。

己龍「叫声」MUSIC VIDEO

ラストの「」では4人でセンターの花道に立ち、笑顔でプレイ。ギターソロでは、酒井参輝さんがまさかのミス。「やべっ!やっちまった!」的な苦笑いと、一色日和さんが爆笑するという逆にレアで美味しい光景は、締めに相応しい和気藹々としたものとなり、目出度く千秋楽完結となりました。

 

本編公演⑦ 黒崎眞弥さんのMC

楽しく爽やかにエンディングを迎えるのかと思いきや、最後の黒崎眞弥さんのMCでは、衝撃の言葉がありました。

 

目を開けてられないんですよ、眩しくて。最後までねぇ、会場の隅まで見渡して終わりたかったんですけど。これは決して照明が悪いとかそういうことではなくて、僕の病気ってこういう・・・ものなんですよね。」

 

声が震え、涙を滲ませながら、詰まり詰まり、言葉を絞りだしていました。

 

「当時、「龍跳狐臥」そして「百鬼夜行」。行なった際は気にならなかった事が、こうして少しずつ・・・状況が変わってきていて
活動を続けるにあたってさ、物凄く負担がね、年を重ねて、年度を重ねていく毎にどんどんどんどん変わってきて、その反動も結構すさまじくて。

 

黒崎眞弥さんは目に病気を持っている事が公表されています。思えば公演中も、他のメンバーのMCの最中や歌唱中に目を閉じていたり手で目を覆うような素振りを度々見せていました。

 

「先日YouTubeでドキュメントを撮ったんですけど、その際にも僕は、会える内に会いにきてくれと、そんな風に言いました。それは煽りとか意地でも呼びたいとか、そういった意味じゃなくて、本心を述べさせて貰ったんです」
何もなしに突然、まさかの発表というのも、それはそれで酷なのかなと思って、経過的なものをちゃんとお伝えしていかねばならないかなという気もします」

 

と、活動休止か?引退か?という思い詰めた様に聞こえる発言もありました。

その後、酒井参輝さんの補足で、活動休止などの話はないということで、一安心ではありましたが・・・

 

次のアルバム、ツアーも決まり、未来に向けて希望を持たせてエンディングを迎えたかったであろうところで、思わず?そんな話をしてしまう心象風景は、私には推し量る術もありませんが、視力が落ちていく恐怖声援の返ってこない暗く静かな会場という不安が募りに募った結果なのでしょうか。

 

 

コロナの蔓延でまざまざと突きつけられた現実ですが、アーティストの活動は有限なのですね。

当たり前に音源を出して、YouTubeに動画が公開されて、ライブが開催されるということは、社会情勢に関わらずとも、たった1人の病気や怪我で失われ得る、本当に脆く儚く、有り難く幸せな事なのだと痛感させられました。

 

***後日追記***

公演翌日、メンバーの感想動画がアップされました。
黒崎眞弥さんのことについても触れられており、ファンの方は少し安心できる内容になっています。

事前プロモーション活動、そしてこのアフタートークまで含めて、本当の意味での公演完結となっています。

お疲れ様でした!

***更に後日追記***

己龍密着シリーズ、「己龍大陸」の完結編とも言うべき動画がアップされました。
いい意味で緊張感のない人たち、緊張感故にか出番の少ない眞弥さん・・・本当に己龍メンバーのキャラクターがそのまま収録されているなと感じました。
公演自体も、己龍そのものが表現された内容だったのだなぁと、改めて感じられました。

それにしてもこういう映像って、DVDの特典とかに付くものじゃないですかね?本当に、自主発信主体という時代の流れを感じさせるなーと思います。

アルバム「曼殊沙華」目前ということで、一つの完結、そして一つの始まりのために公開された動画なのかなと思います。
コロナ禍という時代も同じように終わって、新しい時代の始まりになってほしいと願うばかりです。

【密着 己龍】己龍単独巡業「千幾鵺行」千秋楽 日本武道館公演

終わりに

というわけで、己龍単独巡業「千幾鵺行」ファイナルのライブレポでした。

 

改めて、ライブというものは「今」にしかないものなのかもしれないな、と感じました。
こんなご時世、好きな事も十二分にはできない状況ですが、それでも出来る事を出来る内にやってやろうという気持ちで、限られた時間を過ごしていきたいと思います。

 

それと、声援を上げられないライブの在り方も、どんどん変わっていくべきだと思います

規制が必要なくなるのが一番いいのでしょうが、それを待たずとも例えば、先日の「マツコの知らない世界」で紹介があったような、「観客が予めスマホに録音した声援を再生する」という方法を取り入れるとか。

ゴールデンボンバーが作っていた、「握ると音の鳴るボール」が広まるとか。

兎に角、眞弥さんに声援を届けてあげてほしいです(T-T)

 

色々と思うところはありましたが、令和のライブは、準備から何から何まで、今まで体験してきたのとは全く違うものでした

これからもアップデートされていく「今」のライブを、心ゆくまで楽しんでいきたいと思います。

 

公演セットリスト

 

01. 私ハ傀儡、猿轡ノ人形
02. 日出ズル國
03. 朧月夜
04. 九尾
05. 百鬼夜行
~MC01~
06. 鵺
07. 獄焔
08. オナジアナノムジナ
09. 花一匁
~SE~
10. 煉獄
11. 伽藍堂
12. 蛇婬
13. 蛾ゲハ蝶
~MC02~
14. 手纏ノ端無キガ如シ
15. 野箆坊
16. 鏖
17. 無垢
18. 情ノ華
~MC03~
EN01. 春時雨
EN02. 螢
EN03. 叫声
EN04. 凩
~MC04~
アウトロ(鵺 Vo.off)

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